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□Birthday Trap
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「いや、ちゃんと覚えてたんだよ?でも、最近仕事が忙しくて……」

「へえ、それで?」

「それで……」

「なんだ、もう終わり?てっきり、もっと手の込んだ言い訳を期待してたんだけど」

携帯から顔を上げた臨也は、見るからに不機嫌だった。
いや、元はといえば、臨也の誕生日をすっかり忘れていた私が悪いんだが。
臨也はわざとらしく、深く嘆息した。

「湖宵さあ、高校の頃から、毎年俺の誕生日には日付が変わった瞬間に電話くれてたよね。あれ、結構楽しみだったんだけどなあ」

臨也の一言一言が、グサグサと胸に突き刺さる。
一応ちゃんとプレゼントは持ってきたのだが、既に午後6時前だ。
すっかり忘れてしまっていて、今日は1日友達と池袋で遊んでいた。途中で思い出して、慌ててプレゼントを買って新宿にやって来たのだ。
どうしよう。臨也は完全に怒っていらっしゃる。

「本当にごめん!ちゃんと埋め合わせするから!」

「埋め合わせって?誕生日は今日しかないんだよ?」

「まあ、そうですけど……」

臨也の紅い瞳が、不満げに細められる。
また溜息をついて、臨也は立ち上がった。デスクを回って、ゆっくりと私に近付いてくる。

「俺がどんな気持ちで今日1日を過ごしたか分かる?」

「え?」

ぎゅーっという効果音が聞こえそうなくらい、臨也に抱きしめられる。

「俺はさ、べつに誕生日自体が楽しみなわけじゃないんだ。湖宵が毎年、俺のために祝ってくれることが楽しみなんだよ」

「臨也……」

最低だ、私。
せっかくの誕生日なのに、彼氏にこんな想いをさせるなんて。
後悔ばかりが押し寄せてきて、自分の不甲斐なさに涙が出そうだ。

「ごめん臨也……ほんとにごめん……ッ!お詫びに、今日はなんでもする!」

「へえ……なんでも?」

耳元で聞こえた声に、体が止まった。
見上げてみると、勝ち誇ったような笑みを浮かべる臨也。
どうやら、私はすっかり罠に嵌まってしまったようだ。
本能的に足が後ろに動いたが、生憎、ガッチリと背中に腕が回されている。

「なんで逃げるの?」

「えっと……」

「そうそう、なんでもしてくれるんだよね?嬉しいなあ」

さっきまでとは違う意味の後悔が、新たに生まれた。
確かに、あの折原臨也が誕生日を忘れられて拗ねるだけで終わる筈がない。きっと、この為だったのだ。
固まっている私を、臨也は軽々と抱え上げた。

「さてと、何をしてもらおうかなあ」

「ちょ!いきなりそうなるの!?」

臨也の足は、まっすぐと寝室に向かっている。
こうなってしまっては仕方がない、と抵抗を諦め、黙って臨也に掴まった。
この先、臨也の誕生日を忘れることはなくなるだろう。
























Happy Birthday IZAYA!
2013.05.04.








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