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一之瀬湖宵という人間は、私にとって初めての女友達だ。中学の頃新羅を介して知り合い、今では何でも話せる親友である。
だから、私はすぐに気付いた。

一之瀬湖宵という人間が、変わりつつあることを。

いや、もう既に変わってしまったのかもしれない。
彼女の両親は正式に入籍しておらず、父親には政略結婚させられた別の女性と義理の妹・弟がいるらしい。母親は完璧主義者のかなり厳しい人らしく、湖宵といると育ちの良さが手に取るように解る。

そんな複雑な家庭環境で育った少女の夢は、“家族”を持つことだった。いつか自分の家族を持って、ちゃんとした家庭を作りたいと中学の時に語ってくれた。

あの時の笑顔を見ることは、もう無いだろう。
彼女は変わった。

湖宵には好きな人がいた。
それが、折原臨也である。
私が見ている限り二人は仲が良かったし、新羅もどこか遠慮しているところがあったから、いつか付き合うのだと自然と思っていた。
だが運命とは残酷なもので、幼い少女の心はあっさりと砕かれてしまった。

その頃から、湖宵から真の感情が感じ取れなくなった。
彼女が活躍しているのは嬉しいが、その反面その姿を見ることがつらい。
人前で見せる彼女の笑顔の奥にはたくさんの感情が抑え込まれていて、既に機能しなくなっている。
そうでもしないと自分を保てないと、湖宵が以前言っていた。その目には昔のような光は宿っておらず、ただ淡々と生きているようだった。

私は、湖宵に元のような明るい彼女に戻ってほしい。

そうなる為には――


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