short2
□colorful
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高校の卒業式というものは、案外あっさりと終わってしまうものだ。みんなバラバラになるというのに、別れを惜しむ暇もない。
「帰らないの?」
顔を上げると、既に受験を終えたことにより今日が見納めであろう短ラン姿の臨也。
「ん、もう帰るよ」
卒業証書を厚紙でできた筒に入れていると、この三年間私も随分とやんちゃをしてきたなあと感傷的になってきた。そのほとんどが臨也と関わっていて、アンフィスバエナを作ったり合法ドラッグの地下クラブを作ったりスリル満天の三年間だった。
我ながら、悪い男に引っ掛かってしまったものだと思う。
既に教室には私達以外人はいない。恐らく外で写真撮影でもしているのだろう。
「はい、お待たせ」
立ち上がってスクールバッグを肩に掛けようとしたら、待ってと上から声が降ってきた。
臨也の手にバッグが渡り、机の上に置かれる。
「帰らないの?」
そう尋ねると、臨也の口角が悪戯っぽく弧を描いた。
「今日でこの教室とはお別れなわけだし、最後に、ね?」
ぐっと腰が引き寄せられて、ぶつかるような勢いで唇が重なる。台詞の割にはムードの欠片も感じられない。
しかし段々と深くなっていくキスに、こっちが根負けして臨也の首に腕を回した。
視界の隅に、まだ冷たい風に押し上げられているカーテンや、黒板一杯に書かれた色とりどりのメッセージが映る。
頭が朦朧としてきた頃にようやく唇が離れたが、臨也自身は離れようとはせず、寧ろ腕に更に力が籠められた。
「臨也?」
「ごめん、もうちょっとだけ……」
抱きついてきた臨也の息が首筋に当たる。
「臨也にしては珍しいね」
「しょうがないじゃん。もう湖宵の制服姿も終わりだし」
なんだ、臨也も同じこと考えていたのか。
人間離れしているとは思っていたが、意外と普通の人間らしいところもある。
「臨也、泣いてもいいよ」
「泣くわけないでしょ、別れるわけじゃないんだし。寧ろ……一生離さないから」
臨也にそう言われても悪い予感しかしない、とは言えず、黙って頷いた。
これから先も、危険な事をすることになるのだろう。
それでも私は臨也から離れるつもりはないが。
「臨也、外で写真撮らない?」
「うん、撮る」
桜が咲いていたら良かったのだが、窓の外に見える木にはまだ蕾しかついていない。
その代わりに、臨也の黒い短ランの上で、薄桃色のコサージュが存在感を放っていた。
END
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私の学校は今日卒業式だったので書いてみました
アニメでは臨也さんとシズちゃんは終わった途端飛び出してましたがww