黒き影とともに

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「え、杏里も休みなの?」

「うん。風邪なのかなあ?」

終業式の前日、正臣と杏里が学校を休んだ。朝名前の携帯に、今日は休むと正臣からメールが来ていた。
が、杏里からは連絡はなく、真面目な彼女が学校をサボるとは考えられなかった。
不審に思いながらも、名前は用事があるから、と先に学校を出た。

名前は帝人と別れた後、池袋を廻って黄巾賊の情報を集めた。
そして浮かび上がった“法螺田”という人物。
黄巾賊の主要メンバーの一人なのだが、ブルースクウェアの残党らしい。

――嫌な予感がする……。

名前は日暮れまで情報収集をし、残りは家でやろうと家路に着いた。




「ただいま」

「ああ、おかえり」

妙に上機嫌の臨也が、名前を出迎えた。

「……何かいいことでもあったの?」

「実はね……さっき紀田くんが来たんだよ」

名前の顔が強張る。

「まさか……帝人のこと……」

「そのまさかだよ」

臨也は名前の前に立ち、リビングへと導いた。

「紀田くんは自分から訊きに来たんだよ」

「……」

「こう考えてみなよ。お互いのことを知らずに抗争になるより、今知っておいた方がいいだろう?」

「だからって……」

臨也はソファに座って、名前を見上げた。

「俺は訊かれたから答えただけだよ。それに、君のことは言っていない」

「それはどうも」

名前は眉間に皺を寄せ、正臣と連絡をとろうか悩んだが、今はやめておこうと踏み留まった。
臨也は嬉しそうにその様子を眺めた。

「正しい選択だね。今は一人で考えさせてあげた方がいい」

名前は臨也を睨み、踵を返して私室へと戻っていった。


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