黒き影とともに

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‐来良学園 校門付近‐

下校時間が近づき、多種多様な格好をした生徒が、グループ、あるいは一人で校門から出ていく。四人もそのグループの一つだった。

「つまり、俺は思うわけだ」

真剣な表情をした少年、紀田正臣が呟いた。

「杏里はなんでそんなにエロ可愛いのか、名前はなんでそんなにミステリアス美人なのかって」

あとの三人は、いつも通りの反応をした。
杏里はと顔を赤くし、帝人は呆れたように首を振る。名前は横目でちらりと正臣を見ただけで、照れたりはしていない。正臣の意味不明な言葉に慣れているからか、ある種の貫禄がある。

「エロはない……エロはないよ正臣」

帝人の言葉に、正臣はにやりとした。

「なるほど……つまりエロはともかく、可愛いのは帝人も認めるわけだ!」

「なっ……い、いや、それは……」

「帝人、顔赤いよ。ていうか、私のミステリアス美人とやらはスルーですか?」

名前の言葉で、帝人が更にあたふたとする。

「いや、た、確かに岸谷さんはミステリアスだしっ、それに美人だしっ……」

「おい帝人ー、俺の名前にも手を出すのかよー」

「いつあんたのものになったのよ」

「手なんて出してないよ!」

必死で否定する帝人を見て、名前と正臣が笑う。つられたように、杏里もくすりと微笑んだ。

「ま、なんにせよ、杏里の怪我が無事に完治してよかったよ」

「うん、それは本当にね!」

「傷ももうあんまり目立たないしね」

「あ、あの……ありがとう、三人とも……」

おどおどとしながらも、柔らかい笑みを浮かべる杏里。

紀田正臣
岸谷名前
竜ヶ峰帝人
園原杏里

見た目も性格もちぐはぐなこの四人は、学園内ではちょっとした有名人だ。
正臣と名前、帝人と杏里が付き合っているのではないかと噂もされていた。帝人と杏里は奥手なところもあり、付き合う寸前なのではないかという説もあるが、常に一緒に行動している正臣と名前は、既に公認カップルのようになっている。
正臣は他の三人より数歩前に出て、ターンをして三人の方を向いた。

「よし、杏里のエロ可愛さと名前の美しさを他の女と比べて証明するために、今日は四人でナンパに行こう!」

「なにその理屈!?」

「私はパス」

「え……な、ナンパって……」

「大丈夫、名前と杏里は居るだけでいいんだから!」

「えー。私、忙しいからもう帰るよ」

「そんな!?名前は俺を見捨てるというのか!?」

「違うから。帰りが遅いと五月蝿い奴がいるんだよ」

「あー……」

正臣が急に大人しくなり、残念そうに項垂れた。

「しょうがねーな。気ィつけて帰れよ」

「はーい。じゃあね」

「あ、さようなら」

「さよなら岸谷さん」

三人に手を振り、名前は駅へと足を向けた。


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