黒き影とともに
□罪歌1
2ページ/9ページ
池袋にある、某ゲームセンター。
中学時代に、よく名前と正臣が訪れていた場所だ。
名前は店に入るなり、プリクラ専用のスペースを指さした。
「プリ撮ろ!プリ!」
「はいはい、そんなに引っ張るなよー」
正臣の腕をぐいぐいと引っ張り、いくつかあるうちの一台に入った。
「正臣!どれにする?」
「あ、これがいい!ハートのやつ!」
「オッケー」
背景を選択し、次々とポーズをとっていく。
撮影し終わると、隣の落書きコーナーに移動した。
「あはっ、正臣かわいー」
「もー、照れちゃうだろー」
会話をしながらペンを走らせる。
最後に、赤外線で携帯に転送されてきた画像を保存しながら、名前は微笑んだ。
「正臣、背伸びたね」
「名前も伸びただろー」
「でも、やっぱり男女の差はあるでしょ?」
「勿論」
クスクスと笑う名前を、正臣は不思議そうに見た。
「どうかしたか?」
「いやー、私たちも成長したんだなーって」
「ぷっ!おばさんかよ!」
正臣は名前の手を握った。
「次、行くぞ」
「うん!」
普段は滅多に見せない女子高生らしい名前の笑顔を見て、正臣は微笑んだ。
その後もいくつかのゲームをした後、二人はゲームセンターを出た。名前の手には、正臣がクレーンゲームでとったぬいぐるみが抱かれている。
「ねぇ、晩御飯どっかで食べていこうよ」
「そうだな。どっか入るか」
名前と正臣は、通い慣れたファミレスに入った。
名前と正臣は、同じハンバーグのセットを注文し、先程撮ったプリクラを切り分けた。
「名前と二人っきりとか、何時ぶりだろ……」
ハサミで丁寧に切り分けていく名前を見て、正臣が呟いた。
「んー、中3のとき以来」
「もうそんなにたつのかぁ」
しみじみと言う正臣を見て、名前が懐かしそうに笑う。
「中学のときは、お互い喧嘩ばかりしてたよね」
「そうだったな。初めて会ったのも、名前がチンピラ蹴倒してるときだったし」
過去を振り返りながら苦笑する正臣。
「私がチンピラやっつけた後に、正臣ナンパしてきたよね」
「かなりの美人だったからな」
「あのとき、正臣がなんて言ったか覚えてる?」
正臣は暫く首をひねって、「忘れた」と申し訳なさそうに言った。
「あのねぇ、『ちょっとそこのオネーサン!綺麗な君に返り血なんて似合わないよ!よかったら、俺と恋の駆け引きでもしてみないかい?』って言ったんだよ」
「あー、そんな感じのこと言った!そしたら、『死ねッ』って言われたんだっけ?」
「そうそう。あの時はイライラしてたからね」
遠い昔のことを懐かしむように、目を細める正臣。
しかし、急に悲しそうな表情になった。
「どうしたの?」
「いや」
名前が尋ねると、正臣は切ったばかりのプリクラを手にとった。
「もう、名前の隣に居るのは、俺じゃないんだなーって思って……」
,