黒き影とともに

□罪歌1
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池袋にある、某ゲームセンター。
中学時代に、よく名前と正臣が訪れていた場所だ。
名前は店に入るなり、プリクラ専用のスペースを指さした。

「プリ撮ろ!プリ!」

「はいはい、そんなに引っ張るなよー」

正臣の腕をぐいぐいと引っ張り、いくつかあるうちの一台に入った。

「正臣!どれにする?」

「あ、これがいい!ハートのやつ!」

「オッケー」

背景を選択し、次々とポーズをとっていく。
撮影し終わると、隣の落書きコーナーに移動した。

「あはっ、正臣かわいー」

「もー、照れちゃうだろー」

会話をしながらペンを走らせる。
最後に、赤外線で携帯に転送されてきた画像を保存しながら、名前は微笑んだ。

「正臣、背伸びたね」

「名前も伸びただろー」

「でも、やっぱり男女の差はあるでしょ?」

「勿論」

クスクスと笑う名前を、正臣は不思議そうに見た。

「どうかしたか?」

「いやー、私たちも成長したんだなーって」

「ぷっ!おばさんかよ!」

正臣は名前の手を握った。

「次、行くぞ」

「うん!」

普段は滅多に見せない女子高生らしい名前の笑顔を見て、正臣は微笑んだ。
その後もいくつかのゲームをした後、二人はゲームセンターを出た。名前の手には、正臣がクレーンゲームでとったぬいぐるみが抱かれている。

「ねぇ、晩御飯どっかで食べていこうよ」

「そうだな。どっか入るか」

名前と正臣は、通い慣れたファミレスに入った。
名前と正臣は、同じハンバーグのセットを注文し、先程撮ったプリクラを切り分けた。

「名前と二人っきりとか、何時ぶりだろ……」

ハサミで丁寧に切り分けていく名前を見て、正臣が呟いた。

「んー、中3のとき以来」

「もうそんなにたつのかぁ」

しみじみと言う正臣を見て、名前が懐かしそうに笑う。

「中学のときは、お互い喧嘩ばかりしてたよね」

「そうだったな。初めて会ったのも、名前がチンピラ蹴倒してるときだったし」

過去を振り返りながら苦笑する正臣。

「私がチンピラやっつけた後に、正臣ナンパしてきたよね」

「かなりの美人だったからな」

「あのとき、正臣がなんて言ったか覚えてる?」

正臣は暫く首をひねって、「忘れた」と申し訳なさそうに言った。

「あのねぇ、『ちょっとそこのオネーサン!綺麗な君に返り血なんて似合わないよ!よかったら、俺と恋の駆け引きでもしてみないかい?』って言ったんだよ」

「あー、そんな感じのこと言った!そしたら、『死ねッ』って言われたんだっけ?」

「そうそう。あの時はイライラしてたからね」

遠い昔のことを懐かしむように、目を細める正臣。
しかし、急に悲しそうな表情になった。

「どうしたの?」

「いや」

名前が尋ねると、正臣は切ったばかりのプリクラを手にとった。

「もう、名前の隣に居るのは、俺じゃないんだなーって思って……」

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