黒き影とともに

□逃走
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臨也は歪んだ笑顔を浮かべ、名前に囁き続ける。

「これは俺の予想だけど」

臨也は名前の耳元で言葉を続けた。
耳に毒を流し込むように。

「君が誰かを愛したとしても、いずれその人は老いて死んでしまう。そんな悲しい想いはしたくないから、君は恋愛感情を抱こうとしない」

俯いている名前の表情は分からないが、指先がかすかに動いた。

「もしかしたら、友人との間にも友情なんてなくて、“友達ごっこ”をしてるだけかもしれない。違うかい?」

名前は暫く黙っていたが、臨也の腕を再び握って口を開いた。

「それがどうかしましたか?そうですよ、私は人を愛したくありません。でも……友情だけは本物です。いつか別れがくるとしても……。だから」

臨也の腕に、強い力が伝わる。

「友人を痛めつけようとするものは、徹底的に排除します」

臨也は痛みに顔をしかめ、仕方なく名前から離れた。

「へぇ、力強いんだね。まぁシズちゃんほどでもないけど。今日のところは退散するよ」

臨也はベッドからおりて、寝室を出た。
しかしドアを閉める前に、名前の方を振り向いた。

「俺は諦めないよ?絶対に君を俺のものにするから。じゃあ、またね」

名前はドアを睨み付けていたが、学校の存在を思いだし、ベッドをおりた。


♂♀



臨也は名前のマンションを出てから、もう一度振り返った。

「おもしろいねえ。その誓いはいつまでもつかな?」

臨也は携帯電話を取り出し、駅に向かって歩き出した。

「本気で欲しくなってきたよ」

楽しそうに、愉しそうに、笑いながら

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