黒き影とともに

□愛欲恋慕
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5月4日、朝。

私はニュースを見て体を硬直させていた。

「い……臨也……」

「ん?」

目玉焼きを割っていた手を止め、臨也が不思議そうに私を見る。

「なに?」

「今日って……臨也の誕生日……」

「……あ」

本人も今思い出したようで、箸を持ったままぽんっと手を打った。

「だから昨日俺宛に荷物が届いたのか」

「しっかりしなよ」

臨也らしいと言えば臨也らしいが。

「臨也も17歳だね。おめでと」

「ありがと」

しかし、これだけお世話になっているのに、何もしないというわけにはいかない。

「臨也、私にできることとかある?プレゼント代わりに」

「どれくらいまでならしてくれるの?」

ニヤニヤとしている臨也は、きっと碌なこと考えていないのだろう。

「年齢制限がかからない限りで」

「じゃあ無いね」

「じゃあって何、じゃあって」

寧ろ何を考えていたか聞きたいものだ。
が、ここで話を逸らすわけにはいかない。

「真面目に聞いてるんだって」

「酷いなあ、俺はいつだって真面目だよ?」

「……」

「解ったから、蔑むような目で見ないでよ」

俺Mになっちゃうからとほざいた臨也に、テーブルの下から蹴りを入れた。
その拍子にテーブルが揺れ、カシャンと食器が揺れる。

「いたッ!」

「自業自得。とにかく、真面目に考えて」

これ見よがしに溜息をついた臨也は、暫く宙を眺めた後また手を打った。


「じゃあさ、ケーキ作ってよ」

「ケーキ?それでいいの?」

「うん」

ケーキならレシピさえ見れば作れる筈だ。

「解った、作る」

「食べ終わったら買い物行こうね」

「うん」

そして、また一日が始まる。


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