黒き影とともに

□逆走連鎖
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「ん……」

まだ寝足りないとばかりに落ちてくる瞼を擦りながら背伸びをする。静かな図書室はほとんど使う人がなく、ちょうど良い昼寝場所だった。
時間を確認しようと腕時計を見ると、何故か寝始めたくらいの時間のまま止まっていた。

「あれ……?」

しょうがないから携帯をブレザーのポケットから出す。

「……何これ」

本来ならば時刻が表示されている場所には、何も映っていない。

「うそ、壊れた?」

最悪、と呟きながら顔を上げる。

と――違和感が体を包んだ。

――棚の配置が……違う……。

寝ている間に変えられた筈がない。
良く見てみると、机や椅子もいつもの物とは違うし、壁や天井まで違う。

――夢……?

恐る恐る立ち上がり、出口へと向かった。
カウンターの近くまで歩いていき、ふと壁にかかっているカレンダーが目に入った。

“2003,May”

「…………は?」

開いた口がふさがらない、とはまさにこの事だ。
今は2011年だ。8年前のカレンダーが何故かかっているんだ。

とりあえず教室に戻ろうとドアに手を掛けた瞬間――



ガッシャーーーン!!



グラウンドから凄まじい音が聞こえてきた。
いそいで窓に駆け寄り、下を見下ろす。

そこには、サッカーゴールが宙を舞っているというあり得ない光景が広がっていた。
人だかりの中心に立つ人物を見て、目を見開いた。


「静雄……?」


確かにこんなことができるのは静雄だけだ。
だが、静雄は見慣れているバーテン服ではなく、うちの制服姿なのだ。



――……あ……。



脳が、1つの結論に辿り着く。

私は身を翻して駆け出した。



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