黒き影とともに
□哀は愛となり
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午前1時を過ぎた頃、枕元に置かれていた名前の携帯電話が鳴った。
浅い眠りから、徐々に名前の意識がはっきりとしていく。
暗がりのなか、専用のリモコンを手探りで探しだし、部屋の電気をつける。眩しさに目を細めて枕元を見ると、プライベート用の携帯が鳴っていた。
携帯を開くと、見知らぬ番号が映し出されていた。
「……もしもし?」
警戒の色を示しながら、電話に出る。
すると、緊張感のある低い男の声が聞こえてきた。
『夜分遅くに申し訳ありません。岸谷名前さんですね?』
「はい……そうですけど……」
『私は、××県警の者です』
「……警察の方……ですか?」
『はい。それでですね、折原臨也さんは御存知ですね?』
ヒヤリ、と冷や汗が名前の背中を伝った。
「はい……」
『実はですね、落ち着いて聞いて頂きたいのですが……』
『数時間程前、折原臨也さんが何者かによって、脇腹を刺され、病院に運ばれました』
――……ッ!?
名前目が見開かれる。
バクバクと、急激に心臓が暴れだした。
『折原さんと貴女は同居されているようなので、御連絡させて頂きました。幸い命に別状は無いそうですので、御安心下さい。恐らく通り魔による犯行と思われ、今捜査をしております』
「……そう……ですか……」
名前は、自分の声が小さく震えていることに気付いた。
落としそうになった携帯を持つ手に力を入れ、もう片方の手も強く握り締めた。
「あの……すぐにそっちに向かいます」
そう言ってから電話を切り、大丈夫だ、と何度も心の中で繰り返しながらベッドから下りた。
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