黒き影とともに

□春・異形パーティー2
1ページ/6ページ



あらゆるジャンルの音楽が漏れ出す店内。
名前は受付で教えられた大部屋の扉を開けた。

「あー!名前ちゃんが来たー!」

「池袋の魔装少女登場っすね!」

「あ、岸谷さん」

男女四人が名前に注目する。

「ごめん、遅くなった」

名前は床に積まれている漫画やアニメのグッズを避けながら、帝人の隣まで行き腰を下ろした。

「で、帝人、説明はした?」

「いや、その、今からなんだ」

帝人は狩沢と遊馬崎に向き直った。

「その、こんな事を頼むのもなんなんですけど……」



「僕らに……池袋の案内の仕方を教えて欲しいんです」




♂♀




‐2日前‐

日直の仕事を終えた名前が廊下を歩いていると、前方に友人である竜ヶ峰帝人がいた。
誰かと話していて、制服が真新しいことから新入生だと解った。

「帝人」

「あ、岸谷さん……」

少し困ったような表情をしていて、名前に助けを求めるような視線を向ける。
そんな帝人とは裏腹に、帝人と話していた少年は、明るい笑顔を名前に向けた。

「わあ!岸谷名前先輩ですよね!」

童顔の帝人よりも更に幼い印象の少年だった。

「そうだけど……」

「嬉しいなあ!あ、俺、黒沼青葉っていいます!岸谷先輩とも一度話してみたかったんですよ」

「私と?」

帝人をチラリと見て、なんで?と尋ねた。

「えっと、先輩って……ダラーズの人ですよね?」

ぞくり、と背中に寒気が走った。途端に、黒沼青葉のあどけない笑顔が不気味に見えてくる。

「さっき竜ヶ峰先輩にも訊いたんですけど、岸谷先輩もダラーズの人ですよね?」

「なんで……そんなこと聞くの?」

「俺もダラーズなんですよ。それで、仲良くなれたらなぁって思って!先輩、1年前の初集会の時にいらっしゃいましたよね?綺麗な人だなあって思って見てたんですよ。あ、他の人には言わないんで、安心してください」

名前が警戒していることに気付き、青葉はそう付け足した。名前は笑顔を貼り付けて、そうなんだ、と返した。

「そうだ!」

青葉はポンッと手を叩いて、閃いたように言った。

「ちょうど良かった!竜ヶ峰先輩にはもう言ったんですけど、俺に池袋を案内してくれませんか?」


,
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ