黒き影とともに
□春・異形パーティー2
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あらゆるジャンルの音楽が漏れ出す店内。
名前は受付で教えられた大部屋の扉を開けた。
「あー!名前ちゃんが来たー!」
「池袋の魔装少女登場っすね!」
「あ、岸谷さん」
男女四人が名前に注目する。
「ごめん、遅くなった」
名前は床に積まれている漫画やアニメのグッズを避けながら、帝人の隣まで行き腰を下ろした。
「で、帝人、説明はした?」
「いや、その、今からなんだ」
帝人は狩沢と遊馬崎に向き直った。
「その、こんな事を頼むのもなんなんですけど……」
「僕らに……池袋の案内の仕方を教えて欲しいんです」
♂♀
‐2日前‐
日直の仕事を終えた名前が廊下を歩いていると、前方に友人である竜ヶ峰帝人がいた。
誰かと話していて、制服が真新しいことから新入生だと解った。
「帝人」
「あ、岸谷さん……」
少し困ったような表情をしていて、名前に助けを求めるような視線を向ける。
そんな帝人とは裏腹に、帝人と話していた少年は、明るい笑顔を名前に向けた。
「わあ!岸谷名前先輩ですよね!」
童顔の帝人よりも更に幼い印象の少年だった。
「そうだけど……」
「嬉しいなあ!あ、俺、黒沼青葉っていいます!岸谷先輩とも一度話してみたかったんですよ」
「私と?」
帝人をチラリと見て、なんで?と尋ねた。
「えっと、先輩って……ダラーズの人ですよね?」
ぞくり、と背中に寒気が走った。途端に、黒沼青葉のあどけない笑顔が不気味に見えてくる。
「さっき竜ヶ峰先輩にも訊いたんですけど、岸谷先輩もダラーズの人ですよね?」
「なんで……そんなこと聞くの?」
「俺もダラーズなんですよ。それで、仲良くなれたらなぁって思って!先輩、1年前の初集会の時にいらっしゃいましたよね?綺麗な人だなあって思って見てたんですよ。あ、他の人には言わないんで、安心してください」
名前が警戒していることに気付き、青葉はそう付け足した。名前は笑顔を貼り付けて、そうなんだ、と返した。
「そうだ!」
青葉はポンッと手を叩いて、閃いたように言った。
「ちょうど良かった!竜ヶ峰先輩にはもう言ったんですけど、俺に池袋を案内してくれませんか?」
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