黒き影とともに

□異形パーティー
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「ちょっと名前!これ見てよ!」

テレビを見ていた臨也が、パソコンの前に座る名前を呼んだ。

「何?」

面倒臭そうに椅子を回転させて、テレビの画面を見る。
そこには、名前の家族である異形が映っていた。

「え!?セルティ!?」

名前は椅子から立ち上がり、ソファに座る臨也の横に座った。
『池袋100日戦線』という番組が生放送で池袋の様子を撮っているようで、画面の左下に『LIVE』と出ている。レポーターが必死になって状況を説明していた。
馬に変わったバイクと、それを追う白バイ。

「あの白バイが噂に聞いてた葛原金之助って奴かな?タイミングがいいんだか悪いんだか」

「いいわけないでしょ。葛原金之助って、あの危ない白バイだよね?よく追跡中に事故起こさせる奴」

「そうそう」

臨也が目を細めたまま息を吐いた。

『御覧下さい!どういった仕掛けを用いたのか、馬のようなものに騎乗した不審人物が、ビルの外壁を上って屋上へと移動しました!今、交通機動隊の方が無線で応援を呼んでいる模様です!』

「セルティは本当に俺の予想外の動きをしてくれるね、良かれ悪かれ」

「……」

名前は横目で臨也を睨み、再び視線をテレビに戻した。

「あーあー。セルティみたいな存在は、現代社会じゃいないって事になってるのにねえ。むしろセルティが映画に出てくるような宇宙人とかだったら、国や軍が勝手にもみ消してくれるんだろうけど――まあ、無理だろうねえ」

「私は?私もいなかったことにするの?永遠に人里離れた軍の基地とかで監禁されればいいんで、んぐ!」

臨也は食べかけの手製のフレンチトーストを名前の口に押し込み、無理矢理黙らせた。

「そんなこと俺がさせないよ」

咀嚼しながら睨んでくる名前の視線を感じながら、テレビに目を向けたまま続ける。

「名前はセルティとは違うタイプの異形だからね。名前は神様なんでしょ?監禁なんてして存在を隠すより、新しい宗教でも作った方がいいんじゃないかな」

「だから、神様なんかじゃないって」

「まあまあ、冗談だって」

ケラケラと笑う臨也。
その時、画面の中で変化があった。

「お?」


『現在、黒い服のライダーは屋上に消えたまま沈黙し……あっ!あれは何でしょうか!カメラ越しに解りますでしょうか!我々の頭上から星が消えています!黒い!黒い大きな幕が!う、うわぁ!?』

突如巨大な黒い翼ねようなものがビルの屋上から広がり、そのまま滑空を始めた。ハンググライダーのようなそれの中央に、馬に跨がった人影がぶら下がっている。
名前は苛立ちを忘れて、テレビ画面を食い入るように見つめた。
レポーター達は取材車両に乗り込み、白バイの後を追おうとエンジンをかける。しかし、先行して発車していた白バイが戻ってきて運転手に注意をし始め、途中だがテレビの画像はスタジオ内へと切り替わった。
臨也はテーブルの上の充電ホルダーから携帯電話をとり、名前を横目に見ながら一つの番号を呼び出した。


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