歪んだ愛に溺れて

□涙は既に枯れた
1ページ/6ページ




『臨也……?』

真っ暗な世界で、臨也だけがはっきりと見える。

『ねえ臨也』

一歩近づくと、臨也は同じ距離だけ下がった。

『臨也!』

追い掛けても追い掛けても、臨也は私から離れていく。
俯いているから表情が解らない。

『臨也?』

『名前』

すると、背後から私を呼ぶ声がした。
振り向くと、小学生の姿をした臨也が立っていた。

『いざ――』

『お兄ちゃん!』

臨也と呼ぼうとした瞬間、私の横を誰かが通り抜けていった。あれは小学生の頃の私だ。

『名前、帰ろ』

『うん!』

仲良く手を繋いで遠ざかっていく私達。
もう一度後ろを見ると、1メートルほど離れた所に臨也が立っていた。

『名前、帰るよ』

そっと差し出された手。

『……うん』

安心して手を延ばす。
が、いきなり臨也が消えた。

『え……』

周りを見ても、どこまでも闇が続いているだけだ。

『臨也、どこ?』

『名前』

声がした方を見ても、臨也はいない。

すると、突然足首を何かに掴まれた。

『な……に……』

小さい子供の手が、両足に絡み付いていた。
徐々に体が闇の中に沈んでいく。

『イヤ!離してよ!』

抵抗してもズルズルと呑み込まれていく。
既に腰まで呑み込まれた。

『い……や……』

『名前』

顔を上げると、臨也が手を差しのべていた。
掴まろうと必死に手を延ばすが、なかなか届かない。

『おにい……ちゃ……』

涙で視界が霞む。

『お兄ちゃん!行かないで!』

気づけば、私は叫んでいた。



『お兄ちゃん!』



,
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ