歪んだ愛に溺れて
□パステルカラーの愛憎劇
1ページ/8ページ
「飽きちゃった」
笑顔でそう言うと、目の前の男は顔を歪ませた。
「なんでだよ……名前……」
泣き出しそうな彼を見ていると、自然と口角が上がる。
「金ならいくらでもやるから!だから別れるなんて言わないでくれよ!」
「私、お金なんて別に欲しくないのよね。ただ飽きちゃっただけなの……貴方に」
安いラブホテルのベッドに座り、呆然と立っている男を見上げる。
――さて、どんな反応するかな……。
「そんなの酷すぎるだろ!こっちは婚約まで破棄したんだぞ!?結婚しようって言ったじゃないか!」
「婚約を破棄して、なんて私がいつ言った?私がいつ結婚に賛成したの?」
「そんな……」
その男は、膝を床について黙り込んでしまった。
「……つまんない……」
バッグを掴んで立ち上がる。
「残念、もうちょっとおもしろい反応を期待してたんだけど……サヨウナラ」
男の横を通り、部屋を出た。
♂♀
つまらない。
普通の男は飽きた。
――やっぱり次は……
「平和島君……かな」
あの力のせいか、平和島君は人に触れることを怯えているようだ。
調べてみたら、過去にある女性を助けようとして、逆に怪我を負わせてしまったらしい。
そんな彼が人を好きになったら、どうなるのか……。
ネオンが照らす道を、緩む頬を気にすることなく歩いた。
,