黒き影とともに

□“ダラーズ”
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‐午後11時 池袋‐

人で賑わう東急ハンズの前に、竜ヶ峰帝人と矢霧波江が向かい合って立っていた。
少し離れた所に隠れた名前は、帝人の制服に付けた盗聴機から聞こえる会話を聞いている。
名前が見たところ、変装している矢霧製薬の人間が、十人程待機しているようだ。

――そろそろかな……。

帝人が波江を煽るような発言をしたため、波江は興奮している。

「帝人、今よ」

小さなマイクに向かって、小声で呟く。
名前の呟きは、帝人の耳に入れている通信機へと届いた。
帝人は名前の声を聞き、相手にバレないように携帯のボタンに指をかけ、メールの送信スイッチを押した。
メールの着信音が、夜の池袋に響き渡った。
人が集まってくる。
名前の携帯にも、メールが届いた。
内容は既に知っているが、周囲の人間に紛れ込む為、メールを確認した。

【今、携帯のメールを見ていない奴らが敵だ。攻撃をせずに、ただ、静かに見つめろ】

名前は笑みを浮かべた。

――ダラーズを作って良かった……。

「何……これ……?何なのよ……何なのよこいつらぁぁあッ!」

着信音に混じって、波江の叫びが聞こえた。

――勝った……。

名前は勝利を確信し、更に次の作戦を実行しようと動いた。
素早くメールを打つ。

【セルティ、いいよ。おもいっきり暴れて】

送信して一分もたたないうちに、返信がきた。

【了解】

直後、馬の嘶きが轟いた。
巨大なビルの屋上から、影が垂直に走りおりる。
あちこちで悲鳴が上がった。
セルティが地上に降り立つと、波江の部下が特殊警棒でセルティのヘルメットを弾き飛ばした。
セルティの何もない頭部が現れる。
そしてセルティは、"叫んだ”。

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