黒き影とともに

□革命錐R争
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「おぃ……たった二人だろうがよ!何をもたもたしてやがんだ!」

法螺田が焦った声をあげて、椅子から立ち上がった。
法螺田の視線の先には、倒れている少年達の中心に立つ正臣と名前がいた。
正臣の方は身体中に傷があるが、名前は無傷のまま息一つ乱さず正臣と背中を守っている。
法螺田は銃を握りしめ、一歩後ずさった。
額から出た血を拭おうともせず、正臣は法螺田に近付いていく。
無駄な動きの無い二人は、まるで踊っているようだった。
法螺田はその光景に気圧されて、銃の引き金に指をかけた。

が――

「死ねぁッ!」

少年の一人が鉄筋を降り下ろし、正臣の頭を直撃した。正臣がバタリと崩れ落ちる。

「正臣ッ!」

名前は正臣に駆け寄ろうとしたが、次々と少年が襲いかかってくる。

「あ……?へ……へへ、へへはぁッ!っんだよ、ビビらせてんじゃねえよ糞野郎がぁ!」

法螺田は銃を握る手を緩めながら、倒れている正臣に近付いていく。

「正臣ッ!正臣起きてよッ!」

叫びながら戦う名前を見てニヤリとし、法螺田は足を振り上げた。
しかしその瞬間、正臣が跳ね上がり、バールを法螺田めがけて降り下ろそうとした。

「うおあぁぁ!」

が、正臣の膝から力が抜け、バールの先端は宙を斬った。

「ひひゃぁぁぁッ!」

驚いて半狂乱になった法螺田は、飛び退きながら正臣に拳銃を向けた。
が、銃声の変わりに響いたのは、鋭い金属音だった。
直後、法螺田の手から拳銃が飛び出し、工場の床に落下した。

「正臣!」

少年達が止まった隙に、名前は正臣に駆け寄った。
法螺田の周囲にいた男が、ナイフを持ったまま言った。

「いや、すいません。この人を殺すと、なんか『母さん』が悲しむらしいんで。自己判断で動きました。はい」

「あぁ?てめえぁ!なんのつもりだ……あ、あぁ……ああぁ?」

少年達が後ずさった。
ナイフを持つ男の目は――爛々と紅く光っていた。

「いや……解るんです。すいません。『母さん』、すぐ近くに来てるみたいなんすわ」

次の瞬間、工場の入口の方から激しい衝撃音が響き渡った。


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