黒き影とともに
□斬り裂き魔
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名前が来良学園に入学して、一年がたとうとしていたある日の夕暮れ。
いつものようにパソコンで情報収集をしていた名前に、臨也が後ろから抱きついた。
「ちょっと何!?」
「名前ー。俺のこと好き?」
「は!?いきなりなんなの!?」
臨也の腕から逃れようともがく名前。それに対抗して、さらに強く抱きしめる臨也。
その二人を呆れながら見つめる波江。
「ちょっと、仕事してくれるかしら?」
波江のトゲのある言葉が、臨也にむかって投げられた。
「いやー今日ね、運び屋に仕事頼んだときに、新羅とのノロケ話を聞いて羨ましくなってさー。ほら、俺の愛って一方通行でしょ?だから、愛がほしくってさ」
「だからってなんで私!?」
「一番俺に近い女の子だから」
「高校時代に付き合ってた女のとこに行けば?彼女いっぱいいたんでしょ?」
「……そんなことまで調べたの?」
「うん。その人たちの住所のリストでも作ろうか?」
「いや、遠慮しとくよ。名前がいるしね」
「私を巻き込まないでよ!あ、信者の子がいるでしょ!」
「えー。名前がいい!いつになったら俺のこと好きになってくれるの?」
「静雄に殺されてくれたらね」
「それだけは勘弁」
臨也は名前から離れて、パソコンの画面を覗いた。
「何見てるの?」
「最近はやってる斬り裂き魔事件の捜査記録」
「……待って。これってなんのサイト?」
「サイトじゃないよ」
名前はさらりと告げた。
「警察のコンピューターをハッキングした」
「……本当に名前は……やること大胆だね」
「まあね」
「流石、俺のパートナーだ」
「あのねえ、その言葉聞き飽きた」
「褒めてるのに、酷いなー」
臨也はやれやれという風に首を振り、自分のイスに戻っていった。
名前も、何事もなかったかのように斬り裂き魔の捜査記録に目を通していく。
それぞれが作業をする音だけになった。
その沈黙を、珍しく名前が破った。
「ねぇ、妖刀ってあると思う?」
「「……は?」」
臨也と波江の声が重なった。
名前はパソコンの画面を見ながら、淡々と続ける。
「セルティみたいなのがいるんだから、妖刀があってもおかしくないよね?」
「ストップ。つまり名前は、最近起きてる通り魔事件の犯人は妖刀だって言いたいのかな?」
臨也はふざけて言ったのだが、名前は、そう、と真剣な顔で答えた。
「5年前にも同じような事件があったの覚えてる?」
「ああ、確かにそんなことあったねぇ」
「そのときは死者も出てるのよ。で、今回の事件との共通点は、どちらも凶器が日本刀じゃないかって言われてることなの」
「それは俺も知ってるけどさあ」
名前の発想に呆れる臨也。
しかし名前は強気な口調で、ある妖刀の名前を出した。
「“罪歌”って、聞いたことある?」
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