歪んだ愛に溺れて

□明鏡止水
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「名前さーん!」

背後から聞こえてきた底抜けに明るい声に足を止める。
振り返ると、ブンブンと手を振りながら駆けてくる、茶髪の少年が見えた。その後ろから、大人しそうな少年と少女がついてくる。

「お久しぶりです名前さん!」

「ほんと、久しぶりだねえ正臣君」

プライベートな問題で、最近はすっかりこの子達のことを忘れていた。

「君達は初めましてかな」

正臣君の後ろを覗くと、竜ヶ峰帝人君ともう一人の女の子がペコリと頭を下げた。
確かこの女の子は、赤林さんが世話を焼いている園原杏里ちゃんだったっけ。

「は、初めまして!竜ヶ峰帝人です!」

「園原……杏里です……」

「初めまして、折原名前です」

「あ、臨也さんの……」

珍しげに好奇心いっぱいの目で、帝人君が私を見つめる。

「そ。兄がいつもお世話になってるみたいだね」

「いえ!僕の方がお世話になってます!」

「おい帝人!勝手に話を進めるなよ!俺が名前さんを見つけたんだぞ!」

仲が良さそうに言い合う二人を見ていると、いろんな意味で笑えてきた。
まだまだあどけなさを残したこの子達が、強大な力を持っているなんて誰も思わないだろう。
正臣君も今は居場所があるみたいだ。

「ところで、名前さんは今日は仕事っすか?」

正臣君が役者のような身振りで振り向いて、ぐっと近づいてきた。
改めて見ると、以前よりも背が伸びている。

「いや、今日はフリー」

「じゃあ、これから露西亜寿司行くんすけど、一緒にどうっすか?」

「んー……そっちの二人がいいなら」

帝人君と杏里ちゃんに視線を移すと、二人よりも先に正臣君が大丈夫ですと答えた。

「な!いいよな二人とも!」

「は、はい!」

「大勢の方が……楽しいですから」

「んじゃけってーい!」

あっという間に話がまとまり、正臣君がどこぞの王子のように私の手をとった。

「参りましょうか、姫」

「……あえてツッコまないよ」


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