歪んだ愛に溺れて

□心は泣いていた
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カチリと音がして、先に食べ終えた静雄が背伸びをした。

「あー、美味かった!」

「やっぱり本場のパスタは違う?」

「おお」

わざわざ今日私に会うために休みをとった静雄は、いつものバーテン服姿ではなくラフな格好をしている。それでも元がいいからか、雑誌の中から出てきたみたいだ。

「まだまだあるから頑張って食べてね」

「名前が作ってくれるならな」

悪戯っぽく笑った静雄は、昔よりも男らしくなったと思う。すぐに照れて顔を真っ赤にしていた静雄が懐かしい。

「はいはい、いくらでも作りますよ。でも多すぎるなら、トムさんとか会社の人にもあげてね」

「そうだな」

ごちそうさまと手を合わせ、二人分の食器を持って立ち上がる。
流し台に食器を置いて腕捲りをしていると、後ろから静雄の腕が腰に巻きついてきた。

「どうかした?」

「気にすんな。俺が勝手にひっついてるだけだからよ」

「ん」

犬みたいな行動に微笑しながら、作業を再開した。
静雄が犬なら臨也は猫だな、と頭の中で二人に耳と尻尾が生えた姿を想像する。今度絵理華からコスプレ用のものを借りてみよう。

「なにニヤニヤしてんだよ」

「え?なんでもないよ」

指摘されて、慌てて顔の筋肉を引き締める。
するとその直後に、頭の上にずしりと重みが乗った。

「なあ名前」

「んー?」

「お前もうすぐ誕生日だよな?」

「あ」

冷蔵庫の側面に貼られているカレンダーを見て、自分の誕生日が近づいていることに気づく。

「また歳とっちゃうのかあ……」

「若いくせにそんなこと言うなよ」

「今はいいけど、そのうち気づいたら三十とか四十になってるんだよ」

「……想像できねえ」

「そりゃあどうも」

まあ自分でもあまり想像はできないのだが。
しかし私の誕生日ということは、臨也の誕生日でもあるのだ。
今年は何をあげようか。



――猫耳……は流石に怒るか……。



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