Dark
□悲しい勝利
1ページ/3ページ
<<死合終了ー!優勝者はNo.32 幸村精市君!>>
ノイズ混じりの放送も
目の前に広がる赤も
今の俺には何の刺激にもならない
自分がイップスにおちいってるような感覚
自嘲したくなる
俺が表情一つ変えられず
指先一つ動かせずにいると
黒服の男達に連れて行かれてしまった
そして目覚めた時には病室のベッドに寝かされていた
一瞬状況が全くわからなかったが、記憶を少したどっただけで全てを思い出した
悪夢のような3日間
忘れるワケがない
「みんな...」
もうここにはいない
俺が殺したから
立海の生徒は全員俺が殺した
どうやってとかそんなことまでは覚えていない
ただ、みんなの最後の表情
――全員、笑っていた――
それだけはまぶたの裏に焼きついて、今でも俺を苦しめる
ナンデ、キミヲコロシタオレニ、ホホエムノ――?
いくら考えたって答えなんて出てこない
そもそも答えなんてあるのかな?
もし、あったとしても俺にそれを知る権利は与えられていないだろうな―――
自分の両手を見る
病室と同様に、血の気のない、白い手
肉を切り、返り血を浴び、たくさんの命を奪ってきた
今でも残るその感覚は3日前の自分を戒めるよう
ため息を一つついて、手をパタンとし下ろす
.