-Crow-
□飛んだライオン
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赤い風船が宙でフワリフワリと揺れている。
黒い翼を背中に付けたクロウが、スワローにちょっかいを出しているからだ。
スワロー「スワローのフーセンだよ!?返して!!」
弱々しい力で腰を叩いているスワローを見て満足したのか、楽しそうに笑いながら返した。
クロウ「ホラ、離すなよ」
スワロー「大好きだから離さないもん!」
クロウ「意味わかんねぇ」
よく解らない言い分にクロウもクラムも笑った。
スワロー「ねぇ博士!スワローアレが見たい!」
指差す先はANIMAL CIRCUSの文字。
クラム「サーカスだね、見たいのかい?」
クロウ「絵本の影響だな」
スワロー「ライオンさんが飛ぶんだよ!見たいよ〜!」
クロウ「ライオンは飛ばねぇよ。翼がない。ライオンは翼は持たない生き物だ」
スワロー「飛ぶよ!
だってスワロー達にも羽あるもん!」
その言葉にクロウはグッと押し黙った。
気まずい空気にクラムはたまらず、
クラム「ま、まぁ、見るだけでもさ!ね!行こうか」
明らかに慌てふためくクラムに申し訳なく思いながら、
クロウ「…そうですね、行きましょうか」
先頭をきったクロウに続いてスワローが走り出した。
クラム「やれやれ、難しい年頃だ」
一人呟き、楽しそうに二人の後に続いた。
−−−−−−−…
賑わうテント内。
多種多様な動物達が舞台を跳び回っていた。
司「次はライオンの火の輪潜り!」
スワロー「キャーーー!すご〜い!」
クロウ「お前の声がすごい」
隣で発狂、もとい歓喜の声をあげているスワローを珍獣を見る目で見下ろす。
その時
ガオオォォ!!
ライオンの悲痛な叫びが聞こえた。
舞台から落ちたのだ。
……タスケテ…
聞こえるのだ。
動物の声が…
クロウ「…っ、くそっ!」
ライオンは高台から落ちてしまい、どうやら脚を折ってしまい、立てないようだ。
クロウは自分が人ではないことを知られるのが怖く、じっと見ていたが、居ても立ってもいられず飛び上がった。
「あの子飛んでるわ!!」
「綺麗な羽!」
ワァっと歓声が上がり、クロウも驚いた。
…喜んでる?
ライオンを抱え、舞台上に下ろせば、ライオンにも司会者達にもお礼を言われた。
クロウ「脚が折れてるみたいです。すぐに見てあげてください。」
司会「すごいよ君!鳥人間なんて見たことない!
皆様!
動物達のヒーローに拍手を!!!」
ワァァァアアアアアーーーー!!
舞台一番の喝采を浴び、クロウはただただ目を見開くしか出来なかった。