-Crow-

□失う恐怖
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ぎゃあああああああああ!!






「っ!」




聞き覚えのある声が森に響き渡る…


「…シラサギ!」


彼女の身に危険が訪れたのかもしれない




「くそっ!キルに見張らせたのに…!」



あいつはなにやってんだ!?



信用ある部下に見張らせたが、人間は例外なのか?



シラサギに見せたこともないような速さで森の木々を抜けていく。

久々にクロウは焦っていた。





―――――…






その頃シラサギ達は…









『ごっ、ごめんなさい!いきなり悲鳴なんてあげて!』




「いや、大丈夫ですから!取り敢えず落ち着いてください!」



悪いことをしたら今まで殴られ蹴られを繰り返してきたシラサギは、守りの体制に入っていた。



『私は冷静です!』



「じゃぁその構えなんなんですか!?」


『この体制なら蹴られても痛くないので!気の済むままに…』


「…!」




ー…あいつは育て親から虐待を受けてきた。
あまり怯えるようなことはしないであげてくれ…ー





そうゆうことですかクロウさん…



カタカタと振るえ、屈み込んでるシラサギの肩にそっと手を置き、優しい声で話し掛けた。


「何もしませんよ、シラサギさん」


『!…私の名前…』



俯いていた顔を上げ、真っすぐ瞳を貫かれる。



「フフ…僕の名前はキル。
クロウさんの力で人間の姿に変えられたカナリアです」



フワリと柔らかく笑うキルはシラサギにクロウとは真逆の印象を与えた。



その髪は金髪で、睫毛も眉毛も髪と同じ。

瞳は赤黒く、クロウの左目のような透き通った色はしていない。

髪の長さは肩に着かないくらいで跳ね上がりフワフワ揺れている。


背中に伸びた威圧のない淡い黄色の翼はカナリアを思わせるのに十分だ。





全体の印象はまるで…





『王子様?』


「!」



思わず口走ってしまった。

ヤバい、明らかにかたまってる…








「フッ…ふふふはははは!!」



Σ『!』




固まったかと思えばいきなり笑い出し、涙を流して笑い転げている。




「ごめんごめん!僕はそんなすごい人じゃないよ、ただのカナリア!」




『いゃ、あまりに綺麗な方なので…』



涙を拭いながらキルは再びシラサギを抱き上げた。



『カナリアって人間になっても綺麗なんですね』




「「っ!」」



ガサガサ!!




突然の物音に振り返ると、クロウが目を丸くして立っていた。








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