-Crow-

□心配な彼女
1ページ/2ページ







グンッ




クロウは黒い翼で空をひとかきした。
同時に目の前の景色がグッと近づく。

まるで星を散らしたようにちれぢれに生えた木々はクロウを優しく包み込むようだ。


今飛んでいるのは森の住人達を呼ぶためではない。

張本人の真っ赤だったシラサギの顔を思い出す。


いけないいけない、今はフライト中だ…

集中してシラサギの飯を探すクロウ。


実だったら食べるか…?

肉も有った方が良いよな…

魚が好きかもしれない…


等普段じゃ考えないようなことが、クロウには嬉しかった。
なんだか同じ仲間が出来たみたいで。


人間と烏の混ざったクロウは、正直自分は人でも、はたや鳥でもないと思っていた。


森の住人達と一緒にいるのは、この美しい自然を飛び回るのが好きで、人間よりも動物達は暖かかったからだ。


次第に人間より上に立つクロウを動物達は慕い尊敬した。
愛さえ貰っているだろう。


しかし周りには誰も同じ目線の者はいなかった。





孤独だった




この感情はいつまでたっても満たされて来ず、埋めようのない隙間が取り巻いていた。

しかし今、それが感じられないのだ。

新しい環境、新しい気持ちに心が優しさを帯びているのがわかる。
シラサギは自分と似ていると思う。
この森に自分と同じ生き物が存在しない孤独さが似ていた。



理解者のいない世界が



彼女は今、あの大樹のなかで一人孤独を感じてるだろうか…


泣いてやしないだろうか



苦しみに叫んでいないだろうか…




自分がそうであった様に…



そう思うといてもたってもいられなくて。



クロウは再び翼でグッと空をかいた。








次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ