-Crow-

□初めての仲間
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皆染まってしまいそうな程蒼すぎる空。



息苦しいくらい詰め込まれた木々。



大樹から見た世界は私には広すぎる。





クロウ「シラサギ」



『なに?』




クロウ「俺は仲間達に嘘は伝えない。

今から言うこと、耳をかっぽじってよく聞いとけ。」





『うん』





クロウはまだ見ぬ森の住人達が、下で待っているであろう木々を見下ろしている。





その横顔はあまりに真面目で反らすことは出来なかった。





クロウ「…行くぞ」



言うが早いかシラサギを抱き抱え、漆黒の翼を広げ滑る様に飛び立った。















耳に伝わる風を斬る音とともに、広場の様な場所に見えたそれ。



生い茂った葉を抜けた途端、現れた数え切れないほどの生き物達。



兎、熊、蛇、小鳥、狼、鹿…



有り得ないほどの生き物達。

半端じゃない数に、その範囲は終わりが見えない程ずっと奥まで続いていた。




何百年もの年輪が刻まれた切株にクロウはゆっくりと降り立つ。





その腕に抱いた人間の姿を見て生き物達はドヨリと沸き立った。





クロウ「静にしろ」






途端に静まりかえり、森は普段の姿を取り戻したような静けさに包まり返る。


クロウは威風堂々としており、威厳があった。


目は据わり、どんな肉食動物や猛毒を持つ生き物の前でも決して怯みはせず、寧ろそれらより上である、そんな気迫を漂わせていた。






クロウ「今日から仲間になるシラサギだ!

同じ森の住人であるシラサギに危害を加えるな!





腹の底からドスの利いた声で語れば、皆はじっとその言葉の重さを理解しようとしている。



静寂を破り、野生の熊はクロウに人間の言葉で疑問をぶつけた。



クマ「クロウ様…」


クロウ「なんだ?」



クマ「我々にとって人間は害であり、天敵だ…いくら小娘と言えど、何かあってからでは遅いかと…」



彼等は同感の声をあげている。
クロウは一瞬目を伏せたが、しっかり皆を見た。


クロウ「…確かに、人間は俺達の天敵だ。」


クマ「なら…」



クロウ「だがシラサギは違う。」



クマ「どうゆうことです?」


クロウがその言葉に少したじろぐ。



クマ「人間は無差別に森の仲間達を掻っ攫っているのですよ!?

クロウ様も見たでしょう…!

悲惨な姿へ変わった仲間達を…!!!」




クロウ「…っ」



熊の苦痛に歪む顔を見て、シラサギは自分達がこの森の子らに何かしたのを感じ取った。




クロウは目を伏せ、再び開けば、シラサギと向き合い瞳を合わせる。



心なしかその瞳は揺れていた。




クロウ「シラサギ…お前に話さなければならないことがある。」


『話し…?』



クロウ「俺達が人間を嫌っている理由だ…」



クロウも含め動物達は怒りと悲しみ、怨みの篭った声を上げた。
まるでシラサギを責め立てるように。




『ぁ…あの…私は嫌われてもかまわないよ…?

嫌なら無理に言わないでも…』




クロウ「いや…聞いてほしい。」


そう切なげに囁けば、クロウはシラサギをそっと抱きしめた。

急に抱きしめられれば恥ずかしさと困惑で顔が真っ赤に染まる。

『クロウさ…!』



クロウ「俺は人間が嫌いだ。ここにいる奴らと同じ様に。

大切な仲間を皆捕られている。

化学というエゴの塊がそうさせてんだ。」



『どうゆうこと…?』




クロウ「…みんな、人間に捕まって…
機械と融合した人工キマイラにされてんだ…」





『人工…キマイラ…』





クマ「お嬢さん、人間のくせに見たことがないのかい?」



あんなに公開されてるのになと狐が鼻で笑った。




クロウはシラサギからゆっくり体を離した。



クロウ「すまない。

みんなお前の事を知らないんだ。無礼を許してやってくれ…」



『いいの。それより人工キマイラって?』






クロウ「…ダット、来い…」




『!!』




動物達を掻き分け出てきた一匹の兎。

いや、兎の形をした機械に近かった。



ダット「ワタシは、ココロまでキカイにされるマエにニげダせたウンのヨかったモノです。」




『こんな…のって…』



クロウ「ダットは本当に運が良かった。こんなもんじゃない。他の奴らは皆実験台行きで切り刻まれちまった。」

再び群れから出てきたのは、馬の頭にライオンの体。げっそりとやせ細っている。



クロウ「草食が肉食の体なんだ。草しか食べないから体が痩せちまってる。」



『酷い…』



キツネ「あんたら人間がやったことだろうが!!他人事見たいに言ってんじゃねぇ!!」


ヘビ「アンタらが仲間を奪った!」


シカ「仲間を返せ!」




クロウ「やめろお前ら!」



怒気の篭った声が辺りを再び静寂に導く。


クロウ「シラサギは…」



言いにくそうにするクロウを遮り、シラサギが口を突いた。



『確かに私は人間だわ。でもね、人間の中でも、人間として扱われない者もいるの…。



私のようにね…』



クロウ「シラサギ…」


クマ「お嬢さん、それはどうゆうことだい?」



『私は育て親に人間として見てもらってなかった。


毎日毎日殺されそうになって泣き叫んでも誰も助けてくれない。
周りの人さえ、仲間さえ見て見ぬふり。

そんな薄情な奴らと同じ人間であることが私は嫌なの。


私は皆と同じ、人間が嫌いなの…!』






騒然とした空気。





皆は呆気にとられていた。





人間の中にまさか自分達と同じ考えを持つものがいるとは思っていなかった。


『私はあなた達に協力するわ。人間に利用されるよりずっと良い。



私はここがすき。
皆と私も守りたいの。』


クロウ「シラサギ、すまない、こんな事言わせて…」


『いいの。皆に知ってもらいたかったから。』





キツネ「君も人間にいじめられてたんだ…」


シカ「人間は人間も虐めるなんて…」



クロウ「シラサギも、昔は弱者の立場だった…


だが今は違う。

シラサギは人間の弱者というカゴから逃げ出せた者だ。

カゴから逃げ出せない皆にとって、気持ちを解ってくれるシラサギが必要なんだ。」



皆は黙って耳を傾けている。



クロウ「解るだろ…?



無理強いはしないさ。




中には本当に人間が嫌いな奴が居てもおかしくないんだからな…



ただ夢を実現したいなら、



仲間を失いたくないのなら



…俺の考えに着いてきてくれないか?




とつとつと語りかけるクロウに、やがて皆は慈しむような唸り声を各々上げ出した。



クマ「お嬢さん、私も貴女に協力しよう」


キツネ「仲間に入れてやっても良いぜ…?」


ウサギ「私達に力をおかしください…!」


トラ「今まで私達の気持ちを解った者が有ろうか…」



『皆…』




クロウ「皆シラサギを認めてくれた。

お前も今日から仲間だ!」



今までにないくらいニカッと笑ったクロウ。

歯を見せながら背中をバシバシと強く叩いて来る。




『…っ、皆ありがとう!』




段々と上がる歓声に、その場にいるのと、認めてもらえた嬉しさで小恥ずかしくてシラサギは頬を桜色に染めていた。





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