-Crow-
□初めてのキモチ
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中に入り、木の扉が軋んだ鳴き声をあげながら閉まる。
数秒してふわりと辺りが明るくなった。
『わぁ…』
目の前には壁で、両サイドには大木を中心にしているであろう螺旋上の階段がずっと続いていた。
木の中だと言うのに、緩く、緩く弧を描いて、その広さを表している。
ただシラサギが驚嘆したのは、その意外な広さではない。
『綺麗…』
螺旋階段に沿って、壁には四角い窪みが、上りから下りまでズラリと並び、その中には淡い黄色を放つ光の塊がふわりと浮いていた。
『クロウさん…』
「ぁ?」
『素敵ですね…』
「…!」
…こんなんで感動するなんて…変な奴…
だが確かにクロウはこの見慣れた光景にいつもとは違う何かを感じた。
「…お前って」
『?』
なにか言おうとしたがそれがわからない。
何オレ、コイツに気にかけてんだ…?
馬鹿馬鹿しくなってクロウは言うのをやめた。
「いゃ、いい。…それより部屋を作ってやる。」
『えっ!?そんなこと出来るんですか!?』
まぁなと呟いてからシラサギを背に階段を上がって行った。
ボソッ『何言おうとしたんだろ…言わないなら言わないでほしいな、気になる…』
「ぁア?何か言ったか?」
Σ『何も言ってないですっ!』
慌てて口を塞ぐのを見てクロウは鼻で軽く笑うと再び階段を上がりはじめた。
先程口走りそうになった言葉にクロウは悶々としていた。
それを振り切ろうと早々に階段を上がりたいのだが、彼女は人間そのもので…
「…おい、大丈夫か…?」
『はい…ぜぇ…なんとか…』
樹齢が樹齢なだけに異常な広さと階段数
シラサギにはまるで登山でもしてるような息切れを起こしていた。
ま、無理もねーな、部屋に篭りっぱなしっぽかったし…
それを見兼ねたクロウが
はぁ、とわざとらしく大きなため息をついてシラサギのいる2、3段上の段まで下りてきた。
「…ほら」
『?』
スッと目の前に伸びてきた大きくゴツゴツした手の平にシラサギは意味を理解するよりも先に見入ってしまった。
「…プッ」
『…ふぇ!?ク、クロウさん!?』
「あんま見んな…穴あくだろ」
自分が見入っていてしまったことに上乗せして
初めて見せた笑顔にカァッと顔が熱くなるのをシラサギは感じた。
『すっ、すみません!』
「いいから…ほら」
先程までとは違ういきなりの優しい声にシラサギはドキッとした。
再び手を出され今度はギュッと握った。
「…ッ!」
柔らかく小さな手の感触に触れ、クロウも急に顔が熱くなるのを感じ
心情がバレないようにぐっと堪える。
『…クロウさん…』
「な、なんだ?」
クロウは急なシラサギの甘い声に思わず声が上擦りそうになりながら表情を崩さないよう返事をした。
『クロウさん、手…暖かいね』
「…っ」
屈託のない純粋な笑みを向けてくるシラサギにクロウは心臓をギュッと何かに掴まれる感覚を覚えた。