「ジン、そろそろあの子猫ちゃんがいなくなってから半年経つんじゃない?」
ジンの愛車の中で、ベルモットはジンに言った。
ポルシェに乗っているのは、ジン、ウォッカ、ベルモット、私の4人。
ベルモットも、あんまりジンを刺激するような言葉を言わないで欲しい。
子猫ちゃんとは、半年前に、組織から抜け出した科学者『シェリー』のことで、
ジンとは組織にいた頃、いろいろ関係があったらしいから。
いろいろってほら、ああいうこと。
ジンは恋人なんかもってのほかつくる訳はないんだけど、男だから恋人までとは行かずともそういう存在も必要なわけであって…
って、ベルモットが私に教えてくれた。
胸がチクチクするのはなんでだか分かんないけど…
早くシェリーが見つかって、ジンの口からシェリーという言葉が出てこなくなればいいのにって思った。
「…焦らずとも、じっくりと追いつめてあの世に送ってやるさ」
一瞬黙り込んだジンを見て、ベルモットは楽しそうに笑ってるし
「ベルモット、その話はいいじゃない
それより今は、私達の仕事の邪魔になるかもしれないっていう政治家の抹殺が先よ」
私はジンの機嫌を心配して話題を変えた。
ウォッカは、何にも知らないからただ話を聞いているだけ。
記憶力はいいのに、そういう人間関係には疎いんだから。
「ソライア、お前は今回舞台の袖で抜け出すネズミがいないか見張っていればいいだけだ
余計な事は考えねぇで任務に集中していればいい」
ジンは、少し熱が上がった私に、厳しくも優しい言葉をかけてくれた。
「あら、ソライアには随分と優しいのね」
ベルモットはフフッと笑った。
「……」
ジンは煙草をふかした。
「兄貴はなんだかんだ、新入りに厳しいように見えて甘いですからねぇ」
ウォッカがそう言うと、
「うるせぇぞ、ウォッカ」
と睨まれていた。
いつもピリピリと緊張した空間の中にも、垣間見れる、この雰囲気が私は好きなのかもしれない。
私は、それが例え真っ暗で終わりの見えない世界なんだとしても、
この人達についていく。