青き夢
□積もった想い
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sideS
今日は、三人一組の班でのDランク任務だ。
オレはいつもより少し早めに家を出た。
顔に当たってくる風が冷たいけれど、今日は少し歩きたかった。
最近カカシのことばかりを考えている。
どうしてだろう。
出せない手紙も十七枚になった。
今夜あたり十八枚目を書こうか。
何枚書けばオレの心がわかるだろう。
まるで蓮根を掘るように、泥の中を手さぐりしている。
「あの…」
気がつけば目の前に女の子が立っていた。
無視して通り過ぎようとした時、ピンクの封筒を押しつけられる。
「これっ…!カカシ先生に渡してください!!」
思わず受け取ってしまった。女の子はどこかへ走り去った。
放心したように手紙をみつめて、封をかってに切る。
手紙には名前と、ただ一行。
「好きです、付き合ってください」
そのシンプルな文面を何度も反復する。
出せなかった十七枚を思い浮かべて、少し泣いた。
オレだって、カカシに打ちあけたかった。
オレだって、カカシのことが好きなのに。
こんな簡単なことなのに。
気がついたらオレは家に戻っていた。慌てたように紫檀の箱を取り出し、一度も行ったことのないカカシの家に走った。
ドアを蹴破り、手紙ごと木箱を叩きつけて「好きだ」と叫ぶ。
拒絶されるかもしれない。しばらくは怖くて目をあげられなかった。
そうしたら、低く笑うような声と、「お前には負けたな」と言って同じような桐の箱。
それから、「オレも好きだよ」という囁き声――。
END
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