銀魂

□テイカカズラ
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九兵衛は病院のベッドの上で目を覚ました南戸をみて、ホッとした。
九兵衛の後ろに控えた東城と北大路と西野もホッとしたのが空気で分かった。
「若、俺は一体…」
頭に包帯を巻き、顔中ばんそうこうやガーゼを貼り付けられ、腕も足も固定された南戸は九兵衛にそう問いかける。
「お前は女遊びばかりしているから、闇討ちにあってそこまでぼこぼこにされるんだ。
俺や東城殿や西野をみてみろ。
きちんと稽古をしているから闇討ちにあっても入院なんかしないですんだんだ。」
あきれ返ったような北大路の言葉に南戸は
「ああ、そういや俺、昨日、遊びに行って、柳生家に戻ろうとしたところを後ろから襲われて…。
そうか、俺、死ななかったんっすね。」
と呟く。
「バカ、死ぬなんて縁起でもないこと言うな!」
九兵衛が怒ると南戸はすみませんと謝った後、
「でも、一体誰がこんなことを…」
を呟いた。

一ヶ月ほど前から柳生の門下生が何者かに襲われる事件が多発していた。
もう何人もの門下生がいきなり闇討ちにあい、ケガをしたり、入院したりしている。
そしてついには四天王まで襲われた。
東城や北大路、西野は闇討ちされたとはいえさすが四天王。
負傷はしたものの、相手を返り討ちにしたが、練習をサボってばかりの南戸は相手を返り討ちにすることは出来ず病院に運ばれ、柳生家に病院から連絡があって九兵衛は東城・北大路・西野とともに慌てて病院に駆けつけたのだった。
「真選組が調査に乗り出しているんだが、相手の正体は全然分からないらしい。
俺たちも、自分のダメージをできるだけ減らすのが精一杯で、相手の人相とかそんなものを見ている余裕はなかった。」
西野の言葉に東城と北大路が頷いたとき、南戸の病室がノックされた。
「どうぞ。」
九兵衛がそういうと、病室のドアが開き、入ってきたのは真選組の近藤と土方だった。
「来てくれたのか、近藤くん、土方くん。」

東城も北大路も南戸も西野も、九兵衛が『土方くん』と呼んだ声が1オクターブ上がったことに気がついていた。
頻発する『柳生流門下生襲撃事件』の事を知った真選組は攘夷浪士の仕業ではないか、そう思い、調査を開始した。
その過程で九兵衛と副長の土方はお互いがお互いを意識し始めるようになっていた。
門下生が次々に襲われ、そのために精神的に参っていた九兵衛を土方は不器用なりに必死で支えようとした。
九兵衛自身も器用な方ではないから、土方の気遣いは心地よかった。
そうして二人は、惹かれ合い始めていた。

「また、門下生が襲われたと聞いて、事情聴取をしにきた。
大丈夫か、お前顔色がよくないぞ?」
土方の言葉に九兵衛は作り笑顔を浮かべて大丈夫だと答える。
土方は大丈夫なわけないだろと思ったが、それ以上は踏み込まなかった。
こう立て続けに門下生が襲われては次期当主として心配するのは当然だと思ったからだ。

「とにかく、僕は一度家に戻る。
おじい様とパパ上に南戸の状態も伝えなければならないし、南戸の入院荷物も持ってこなければならないから。」
九兵衛の言葉に東城が
「若、私も一緒に参ります。」
と言ったが、
「それよりお前たちも一回その闇討ちをしている人物にあっているのだから、真選組の事情聴取に協力してくれ。」
九兵衛はそう断った。
「危ないから俺が送っていく。」
と土方が言ってくれたが
「タクシーで行くから大丈夫だ。
それより、南戸をよろしく頼む。」
と九兵衛は頭を下げて病室を出て行った。
九兵衛は病院の前のタクシー乗り場でタクシーに乗り込むと自宅の場所をを告げて深くため息をついた。
そして上着のポケットにしまってあった封筒を取り出した。
差出人の名前はない。
けれども差出人が誰かは分かっている。
高杉晋助…鬼兵隊を率いており、過激派攘夷浪士のカリスマとも呼ばれている男。
それが『柳生流門下生襲撃事件』の犯人だ。
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