銀魂

□彼女が彼になったから
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「ちょっとぉ、ヅラ子、遅いじゃないのよぅ!」
店に入るとそう声をかけられた。
「すまん、申し訳ない、アゴ美殿。」
ヅラ子はそう言って不満そうに自分に声をかけてきたアゴ美に謝る。
「ちょっとぉ、あたしの名前、アゴ美じゃないんだけどぉ…」
「あれ、今日は九兵衛殿が来てるではないか!
なぜあんなに長く九兵衛殿は休んだんだ、アゴ美殿?」
「あんた、まったく人の話聞いてないわよね…。
まぁいいわ。
九ちゃんは男の子をつける突貫工事をしてたからねー。
そのためにちょっと長く休んでたのよ。」
アゴ美の言葉にヅラ子は驚く。

ヅラ子は現在、かまっ娘倶楽部で働いている。
なんでこんなところで働いているのかといえば、それは九兵衛がかまっ娘倶楽部で働き始めたからだ。
『男だ女だと追及するのは疲れた。
性別を超えた存在になれる世界を探す。』
そう言ってかまっ娘倶楽部で働き始めたと聞いたので、自分もヅラ子になってかまっ娘倶楽部で働くことにしたのだ。
キャラがかぶっているのは許せない。
堅物真面目黒髪長髪キャラは自分だけでいい。
そう思うのに、こんなに九兵衛の事が気になってしまうのは何故なんだろう?
結局ヅラ子になって、九兵衛を追いかけるようにかまっ娘倶楽部で働き始めたけど、俺は何がしたいのだろう?
そうは思いつつもヅラ子になって働いていた桂はある日、急に九兵衛がかまっ娘倶楽部を休んだので
「エースは二人もいらないわ!
九兵衛殿はヅラ子に恐れをなして逃げたのね!」
なんて言いつつもなんで休みなのだろうと心から心配していた。
その九兵衛がやっと店に出てきて、内心嬉しかったのに休んだ理由が『男の子をつける突貫工事』のため?!
それを聞いたとき、ヅラ子の手が震えた。
それじゃ、どうしたって自分と九兵衛殿は結ばれないじゃないか。
そこまで考えてからヅラ子は衝撃を受ける。
今、自分は『結ばれないじゃないか』と思った。
ということは、要するに俺は九兵衛殿と結ばれたかったということなのか?!
それじゃまるで、俺は九兵衛殿に恋をしているみたいじゃないか…!
ヅラ子は愕然とする。
そうか、こんなに九兵衛殿の事が気になって仕方なかったのは、九兵衛殿の事がすきだったからなのか。
こうならなければ、自分の気持ちに気がつかないなんて…。
なんて自分は馬鹿なんだろう。
もう、九兵衛は突貫工事を終えてしまったのだ。
どうして工事をする前に自分の気持ちに気がつくことが出来なかったんだろう。
もう手遅れ…になんかさせてたまるか。
九兵衛が男の子になってしまったのなら、自分が女の子になればいいんじゃないか!
人より遥かに前向きで、でもその方向は若干ずれてる桂はいい事を思いついたとばかりに、アゴ美に
「アゴ美殿!
明日からヅラ子も工事のためにここをしばらく休むから、西郷殿にそう伝えてくれ!」
と叫んで、店を飛び出していた。
膳は急げ、だ。
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