銀魂

□アンクレットの意味
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九兵衛は万事屋の机の上に置かれたマニキュアをじっと見てた。
そして銀時はそんな九兵衛をじっと見ている。
九兵衛がさっきからじっと見てるコーラルピンクのマニキュアは、銀時が九兵衛に買ってあげたものだ。

一人でこっそりとパフェを食べに行った銀時は、その帰りに見知った顔があまり見慣れない格好でドラッグストアの前にじっと佇んでるのを見つけた。
「こんなとこでなにしてんの、九兵衛。」
そう声をかけると九兵衛は肩をびくっと震わせて振り返った。
「銀時か…」
「そんな格好でどうしたんだ?」
銀時はそう聞く。
九兵衛は今日は女の格好をしていた。
「似合わないのは分かってるんだが…」
九兵衛がうつむいたので銀時は慌てて手を横に振る。
「いやいやいや、そういう意味じゃなくて。
似合ってるけど、お妙が一緒にいるわけじゃないのに女の着物着るの、めずらしいじゃねえか。
いつもそういう格好してた方がいいと銀さんは思うけどさ。」
銀時の言葉に九兵衛は嬉しそうな顔をしながら赤くなる。
そんな九兵衛を銀時は可愛いと心から思う。
普段はあんなに凛々しくて男顔負けに強いのに、こういうときの九兵衛は誰にも見せたくないくらい可愛い。
とんでもなく可愛い。

「イボに憑依された時、僕はかまっ娘倶楽部と言うところで働いていたんだ。」
が、そんな可愛い顔のまま発せられた九兵衛の言葉に銀時は時が止まったような気がした。
ちょっと何やってんの、この子?!
なんでかまっ娘倶楽部なんかで働いてたの?!
銀時は驚いてしまい、声も出ない。
が、九兵衛はそんな事にも気が付かないで話を続ける。
「その時、新八くんが可愛いとか、めちゃめちゃ好みだと言ってくれて。
それが嬉しくて…それで…それでちょっとこんな格好してみてもいいかなって…。」
真っ赤になって恥ずかしそうに小さな声で言う九兵衛は銀時の顔が不機嫌になったことに気が付いていない。
まさか、新八がそんな気の利いたことがいえるとは!
銀時のそんな気持ちに気が付かず、九兵衛はもじもじしている。
そんな九兵衛を見ているうちに、不機嫌な気持ちはおさまって、やっぱ可愛いなと思う気持ちが湧き上がってきた。
「確かにまぁ、新八の言う通りだ。
それで、お前はこんなとこで何をしてるんだ?」
「……いや、あの…化粧品とか見てみたいなぁと思って。」
九兵衛の言葉に銀時はその腕を掴んだ。
「だったらさっさと入ればいいじゃねぇか。
銀さんも一緒に入ってやるから!」

そして銀時は九兵衛と一緒にドラッグストアに入り、九兵衛に似合いそうな口紅とアイシャドーを見繕ってやった。
その時に、小瓶に入った綺麗な色したものーマニキュアに九兵衛が興味を示したので、それも買ってやったのだった。
そのお礼にと九兵衛が甘味をおごってくれて、そのあと二人で九兵衛に似合いそうな着物や小物なんかを探しながら町を歩いて、万事屋に戻ってきた。
なんとなくの成り行きで九兵衛もそのまま銀時しかいない万事屋にあがりこみ、初めてみるマニキュアをじっと見つめているのだった。
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