銀魂

□花魁道中
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この花魁・柳、本名は柳生九兵衛といって土方の幼馴染。

二人とも武州出身で、九兵衛の方は代々続く名家の一人娘、土方はその柳生家に仕える使用人の息子だった。

この柳生家では代々長女は不幸になるという言い伝えがあり、それを恐れた九兵衛の両親は長女として生まれた彼女に男の名前をつけ、できる限り女らしいものに触れさせず、男として育てた。
彼女に降りかかる不幸が少しでも少なくなるようにとの両親としての精一杯の愛情からだった。

しかしその言い伝えのせいかどうか…彼女は10才の頃に誘拐されかけてその際に左目を失明した。

それからは使用人の息子で剣術道場に通い、剣の才には恵まれていた土方が九兵衛の護衛役を仰せつかった。
幼くして誘拐されかけ、失明したというのに
「僕が強かったらこんなことにならなかった、だから強くなりたい。」
と土方に教えを請い、剣を習い始めた九兵衛を土方は大したやつだと思っていた。

しかし、不幸はこれで終わりではなかった。
九兵衛が13歳の時のことだった。
この頃にはすでに5つ年下の九兵衛を土方は女として愛するようになっていたし、九兵衛の方も土方を好きだと言ってくれていた。
使用人の息子とその家の娘の恋愛、まして九兵衛がまだ13歳だから周囲には秘密にしていたが、土方も九兵衛も一緒にいれるだけで幸せだった。

そんなある日、当主である九兵衛の父が騙されて多額の借金を負った。
その借金のカタに金貸しが要求したのは九兵衛だった。
男として育てられたとはいえ、九兵衛は華や歌や楽器もきちんと習っていてその腕前は町中の評判になるほどだった。
常に眼帯をつけてはいても美しく整った顔立ち、成長する過程にあるからこそ混在する子供らしさと女らしさ。
そういうものが金貸しの目をひいたらしい。

土方がこの借金は九兵衛を手に入れるために金貸しが仕組んだことだったと知ったのは真選組副長になってからだったが、とにかくその金貸しの要求を知った九兵衛は自ら家のために金貸しの元に行くことにしたのだ。


そして九兵衛が金貸しの家に行ったその夜、金貸しの家に賊が押し入り、金貸しとその家族、使用人たちは皆殺しにされ、九兵衛だけは連れ去られて行方知れずになった。

九兵衛が金貸しの家に行くと言った時も、土方は何もしてやることが出来なかった。
彼女を本気で愛していたのに、ただ歯噛みしながら金貸しの家に行く九兵衛の背を見送ることしか出来なかったのだ。

今度は何もしない、できない、そんな状況に甘んじたりしない。
必ず連れ去られた九兵衛を見つけ出す。

そう決めた土方は上京し真選組に入隊、そうしてメキメキと頭角を現して副長にまで上り詰めた。

しかし、仕事の間にいくら調べても九兵衛の行方は知れなかった。
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