銀魂

□桃の節句と花言葉
1ページ/3ページ

総悟には最近気になる人がいる。
それが、柳生九兵衛だった。
柳生家に乗り込んだときに知った九兵衛の複雑な家庭環境、その時にみた涙、そしてキャバクラでみた可愛い格好、凛々しい柳生家次期当主としての姿…。
いろんな顔をもつ九兵衛のその多面性に、気がついたら九兵衛が気になって気になって仕方なくなっていた。
一方の九兵衛も、男に触られたら投げ飛ばしてしまう癖があるのに真選組では沖田だけは大丈夫だったので(近藤も土方も山崎も投げ飛ばした事がある)総悟の話には気楽に応じることができた。
そして街中で会うたびに話をしているうちに総悟を意識するようになっていた。

それは二月の下旬のことだった。
警邏中だった総悟は、竹刀を担いで歩く九兵衛を見かけ、声をかけた。
「九ちゃんじゃねぇですか、こんちはー。」
振り返った九兵衛はかすかに笑みを浮かべる。
「沖田くんじゃないか、こんにちは。
警邏中か?」
「そうでさァ。
九ちゃんは?」
「出稽古の帰りだ。」
「それじゃ、寒いしそこの甘味屋にでも入りやしょう。」
「警邏はいいのか?」
「少しくらいなら大丈夫でさァ。」
総悟にそう言われ、九兵衛もそれならと一緒に甘味屋に入る事にした。
「そういや、もうすぐ桃の節句ですねェ。」
甘味屋の店内は桃の花の造花や折り紙で作ったお雛様が飾られていた。
「そうだな。」
「何か桃の節句的なことは柳生家でするんですかィ?」
「しないよ。
柳生家では桃の節句はないんだ。
端午の節句ならやるけどね。」
「そうですかィ。」
総悟は桃の節句の話はそこで終わりにして他の話を振り、九兵衛もその話にのってくる。
いつものことだがちょっとのつもりだったのに話が弾み、怒った土方が総悟を探しだして連れ戻しにくるまで、二人は一緒に話をしていた。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ