銀魂

□夏休み争奪戦
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「くじ引きの結果、今年の夏休み当番は七番隊、居残り幹部は近藤さんに決まった。」
土方の言葉に大きな拍手と、
「え〜」
という小さな声とで真選組屯所の大広間は騒がしい。
8月の中旬。
接客業以外では夏休みを取る時期だ。
しかし、武装警察真選組は対テロ組織用の武装警察だ。
全隊士がいっぺんに夏休みをとるわけにいかず、真選組では夏休みは一つの隊と、一人の幹部が屯所に残り、有事に備えることになっている。
そして毎年、それはくじで負けた隊と、幹部は土方が残っていた。
だから今年はお盆に夏休みがほしいと土方に言われて、近藤は頷かざるを得なかった。
毎年土方にやってもらっていたのだから、休みたいという土方の希望をかなえてやりたかった。
それに対して総悟はとても不満だったが、近藤がいいといったのだから仕方ない。
武装警察・真選組。
明日から楽しい楽しい夏休みだ。

同時刻、万事屋では銀時が神楽と新八に
「は〜い、万事屋、明日から夏休みでぇ〜す。」
と宣言していた。
「あんた何を言ってるんですか?!
家賃払ってなくてお登勢さんから催促されてんのに、休みなんか取れるわけないでしょーが!!」
「そうアル!
銀ちゃん頭に何かわいたネ!
明日から食べる米もないアル!
どうするアルか!」
新八と神楽の言葉を無視して銀時は明日の予定について考えていた。
万事屋も、明日から楽しい楽しい夏休みだ。

同時刻、柳生家。
柳生四天王筆頭・東城の私室には柳生四天王が集合していた。
「で、敵の様子はどうなんですか?」
東城の言葉に南戸が
「真選組は、明日からの夏休み、副長、一番隊隊長、監察の三人が取ってしまったそうです。」
と答えれば、西野も
「万事屋も明日から夏休みだそうです。」
と答えた。
「東城殿、やつらやはり柳生流の道場の夏休みを把握しています。
明日はきっと若の元に来るでしょう。」
と北大路がメガネをクッとあげた。
「やはりそうですか。
我々の若を、あんなやつらには渡してはいけません!
北大路、西野、南戸。
若をなんとしても守り抜き、若と夏休みに海に行くという我らの目標をなんとしても達成させなければなりません!」
東城が声高らかに宣言する。
柳生流は多くの門下生を抱える名門道場。
門下生の中には道場に通ってくるものもいるが、柳生家の敷地内で共同生活を送っているものもいる。
そういう門下生が自宅に帰る為に柳生流の夏休みは若干長めだ。
長めなので敏木斎と輿矩は、旅行に行ってしまうのが通例だ。
しかし、柳生家始まって以来の天才・神速の使い手と謳われている九兵衛は旅行に同行せず、道場で自主練をすることになっている。
つまり、日ごろはなんだかんだいいつつ、九兵衛に悪い虫がつかないように気を配っている保護者がいないのだ。
その代わりに九兵衛を狙う悪い虫から九兵衛を守りつつ、いとしの若と楽しく夏休みを過ごす……そんな夢を四天王は見ていたのだ。
そんな水面下での争いを知らず、九兵衛は誰もいない道場で素振りをしていた。
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