銀魂

□三千世界の鴉を殺す
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第1話

「婚約ぅぅぅ?!」
総悟の目の前にいる近藤と土方は目を最大限に見開いて叫んだ。
その声に思わず総悟は耳をふさぐ。
それでも二人の声は聞こえてくる。
「何で、どーしてそうなった?!」
「なんでいきなり?!
お前、いつから九ちゃんと付き合ってたの?!」
「べつにいきなりじゃありやせん。
ただ、今まで黙ってただけでィ。」
総悟はそっぽを向く。
本当の事など言える訳がない、さすがに。
「何で今まで、そんな大事なこと黙ってたんだよぉ!」
近藤は目をうるませていた。
総悟が九兵衛との関係を隠してたのが相当嫌だったらしいが、つい昨日、そういう関係になったのだから、何で黙ってたんだよなどと言われても困る。
「相手は柳生家の一人娘ですからねェ。」
それでもごまかす言葉が出てくるあたりが総悟のすごいところだろう。
「まぁ、確かに噂になっちゃ、まずい相手だろうが…。
しかし、よく柳生家がお前と柳生の婚約を認めたな。」
土方はくわえたタバコに火をつけることも忘れるくらい、驚いているようだ。
「まぁ、責任取れっていわれちまいましてねェ。
そんでも、俺がまだ18だって言うんで、結婚は20才になってから、それまでは婚約で我慢しろっていわれたんでさァ。
別に俺は結婚してもいいんですがねィ。」
「責任って…まさか!」
「あー、その辺は言えやせん。
とにかく、そういうことなんで、よろしくお願いしやす。
そんじゃ、報告はしやしたから。
俺、今日は非番なんで、また柳生家に行ってきます。」
そういうと総悟は立ち上がる。
「え?
総悟、今日非番だったっけ?」
「ザキと変わってもらったんでさァ。」
そう言って近藤の私室を出て行く総悟の後姿を、近藤と土方は見送っていた。
総悟の姿が見えなくなってから、近藤が首をひねる。
「しかし、あの二人付き合っていたのか?
俺、そんな話はお妙さんからも聞いたことがないぞ。」
「まぁ、確かに柳生のほうは総悟を好きそうには見えなかったけど、男と女なんていつどうなるかわかんねぇし、こういうこともあるのかもしんねぇな。」
土方はやっとタバコに火をつけた。
「けど、婚約したっていうなら俺、柳生家に挨拶に行ったほうがいいんじゃないの?
総悟、ミツバ殿が亡くなってもう血縁者はいないし、俺が保護者みたいなものだから。
それに柳生家の娘と結婚するのに結納とかもしないとまずいだろ。」
「嫁に取るんじゃなくて総悟が婿に行くんじゃねぇのか?」
「だからそういう話もきちんとしに行かないと!
と言うわけでトシ、あとよろしく。
総悟ォォォ!!」
自分の部屋を飛び出して走っていく近藤の背中を見送って土方は深いため息をつく。
そして首をかしげた。
総悟が九兵衛を意識していたのは何となく感じていた。
が、九兵衛は総悟をまったく意識しているように見えなかった。
言い方は悪いが、九兵衛にとって総悟は眼中にない、そんな感じだったのだ。
それなのに、いきなり婚約…?
不自然なものを感じつつも、土方は局長がいなくなってしまったので仕事が山積みになる事に思い至り、頭を仕事モードに切り替えた。
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