銀魂

□万事屋学院高校の新学期5 合宿2日目
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合宿二日目。

銀時は内心の動揺を回りに悟られないように必死で顔を取り繕っていた。

この旅館は本来なら食事は部屋に運ばれるが、今回は合宿なので食事は大広間で全員でとる事になっていた。
なので全員が広間に集まっていたのに、九兵衛だけは現れないのだ。

昨日、九兵衛の部屋にいた銀時としては、自分のせいでこうなってしまったわけだし、気が気ではない。

「珍しい事ぜよ、九ちゃんがこんなに時間に遅れるなんて。」
辰馬の言葉にあやめが
「確かに彼女は五分前行動を心がけてる人ですから、おかしいですね。
あたしが呼んで来ましょうか?」
とか言ってる。

モーニングコールは設定してきたが、起きれなかったのだろうか?

「うーん、見てきてもらって…」
辰馬が言いかけたとき、
「遅れてすみません!」
と言いながら、九兵衛が広間に入ってきた。

高杉が九兵衛に向かって口笛を吹く。

「食事の席で口笛なんて止めなさい。」
九兵衛はそう言って高杉を咎めたが、高杉は
「はーい」
とにやけて返事をしただけだった。

今の九兵衛にはいつもの凛とした雰囲気はない。
浴衣姿のままで、髪は梳かしてはあったが結ってはいなくおろしたまま、眼帯はしていたが化粧はしておらず、頬にシーツの跡がある。
明らかに、さっきまで寝ていましたという姿なのだ。

銀時と辰馬は旅館の浴衣姿のままだったが、あやめは私服だったし生徒たちは剣道部のジャージを着ているので、余計に目だつ。

その姿は無防備で、銀時は慌てて生徒たちの方を見た。
近藤や土方、北大路なんかは真っ赤になって九兵衛を見ないようにしているし、高杉や総悟、南戸なんかは逆に九兵衛を見ている。
東城は泣いていた。

おめーら、俺の九ちゃんをみるな!
銀時は喉まででかかった言葉を飲み込むのに必死だった。

「柳生さん、大丈夫?
疲れてるんじゃないの?
ほっぺたにシーツの跡がついてるわよ?」
あやめは心配そうに九兵衛の顔を覗き込む。

「大丈夫です。
ちょっと寝過ごしちゃっただけで…。
本当にすみません。」
そう言って九兵衛は席に着いた。

「じゃあ、全員そろったから食事にするぜよ。
頂きます。」
辰馬がそう言って、全員が頂きますを言うと、箸を手に取る。

さすがに男子高生だけあって、全員朝から食欲が旺盛だが、九兵衛はそんなに食事に手をつけていなかった。
元々、朝からそんなに食べられる方ではないが、明らかにいつもより食事の量が少ない。

悪いことをしたと銀時は心から反省していた。
あんな様子で指導なんか出来るのだろうか、そう思うが練習の集合時間には九兵衛はきちんと髪を結わき、いつも通りのうすい化粧もしてきりりとした表情で現れた。

だから銀時は安心していた。
そして朝方に心に決めたとおりに、土方と沖田と東城と高杉には厳しい指導をしていた。
だから九兵衛のことは気にしていなかった。

昼食の時間になった時に九兵衛が居ないのに気がついて、驚いた。

「九ちゃんは?」
と辰馬に聞くと、
「食事はいらんから、部屋で少し休みたいちゅうてた。
だからそうしなって言ったぜよ。」
と答えられ、銀時はやはり自分が無理をさせたのではないかと心配になった。

生徒たちも
「九ちゃんが居ない!」
「九ちゃんがいないとつまらない。」
と言い出し、あやめが
「本当に柳生さんはもてるわね。
あたしは銀さんさえいればいいんだけどね!」
と言いながら銀時に抱きつこうとしたのをあっさりと避けて銀時は食事が終わったらおにぎりでも作ってもらって九ちゃんの部屋に持っていこうと決めていた。

これが、今後の二人の仲に影響を与えることになるなんて、銀時はもちろん、九兵衛も思っていなかった。
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