銀魂
□誰にもお前を渡さないSide九兵衛
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一ヶ月くらい前の夜中の事だった。
息苦しさを感じて目が覚めたら、お兄ちゃんが僕の上にいた。
何が起こってるのか分からなくて呆然としてる僕をお兄ちゃんは抱きしめた。
「お前が好きだ。
妹としてじゃない、女としてお前を愛してる。」
そうして、お兄ちゃんは僕を抱いた。
僕は混乱した。
今まで優しかったお兄ちゃんが知らない人みたいに思えて怖くて、抵抗なんか出来なかった。
そしてお兄ちゃんと僕は兄妹じゃなくなった。
その日からお兄ちゃんは独占欲を僕にぶつけるようになった。
「もう土方を家に入れるなよ。
土方だけじゃない、もう男と出かけたりするな。
お前は俺だけ見てればいいんだ。」
そう言ってお兄ちゃんは僕を何度も抱いた。
僕にとってはお兄ちゃんはお兄ちゃんで、だからお兄ちゃんとこういう関係になったことをすごく不自然なことだと思う。
それでも僕はここに、お兄ちゃんのそばにいる。
だって僕には他に行く場所なんかない。
ここにいるしかない。
お兄ちゃんのそばに居るしかないんだから。
それにお兄ちゃんは両親と自分の左目をたった20才でなくしたというのに僕の事を一生懸命育ててくれた。
大学に通いながら20才の男の人が一人で子供を育てるのは大変だったと思う。
たくさんのものを犠牲にしてきたと思う。
それでお兄ちゃんが満足だって言うなら僕はお兄ちゃんの思う通りに生きていこうと思っている。
だから土方くんとは、あの日から学校以外では会っていない。
一週間ほど前、土方くんに
「どうして最近、俺を避けているんだ?!」
と聞かれた。
僕は、
「お兄ちゃんが男の子と口をきいちゃダメだって言ったから。」
と答えた。
「お前はそれで平気なのか?!」
土方くんは驚いたように僕にそう聞いた。
「僕はお兄ちゃんに育ててもらったんだ。
血の繋がらない妹の僕をお兄ちゃんは必死で育ててきてくれた。
だから、僕はお兄ちゃんのいう通りにする。」
そう言った僕に土方くんは
「可哀想だな、お前。」
とだけ言った。
僕を始めて抱いたのはお兄ちゃんだったけど、僕に始めてキスをしたのは土方くんだった。
あの時、僕は嫌だと思わなかった。
むしろ、なんだか嬉しかったんだ。
もしかしたら僕は土方くんのことを少しだけ好きだったのかもしれない。
友達としてではなく、男の子として。
でも、もうどうにもならない事なんだ。
あの日から、土方くんは僕に話しかけてくることはなくなった。
僕はそれを寂しいと思う自分の気持ちに気がつかないふりをしている。