黒子のバスケ

いちばんたいせつなひと
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大学から帰って食事と入浴を終えてリビングに顔を出した青峰は
「ねぇ、これから黄瀬君がバラエティに出るんだって。」
と母に言われ
「ふーん。」
と気のない返事をしながらも、スポーツドリンクのペットボトルを手にリビングのソファに腰掛けた。


黄瀬がさつきと結婚式を挙げてから、半年が経った。
黄瀬の結婚会見は世間的に好評で、年配の女性の心を鷲掴みにした。
そして、若いのにきちんとしていると、年配の男性からの評判もよく、黄瀬は結婚でさらに人気を伸ばした。
若い女の子の間では『キセリョ、マジ王子』とまで言われるほど、会見の黄瀬は確かにかっこよかった。

だが、写真だけ公開されたさつきに興味を持つ人がいるのも当然といえば当然で、さつきは未だに大学は休学中だ。

それでも一度だけ行った黄瀬とさつきの新居で、さつきは綺麗な笑顔を浮かべて青峰たちを出迎えてくれた。
「時間があるから練習したの。」
と笑って、まともな手料理で。

「さつき、料理が超上手くなったんスよ。
マジ、毎日家に帰るのが楽しくて仕方ないっス。
オレ、結婚してよかったっス。」
と黄瀬も顔を緩ませていた。


さつきの結婚式の時に始めて自分の気持ちを自覚した青峰としては、そんな話にすら嫉妬してしまう。

それでもそんなことは顔にも出さなかった自分を偉いと褒めてやりたい。

さつきは青峰のことが一番大事だから恋愛にしたくない、それを黒子の口から言われた時、もうどうにもならないのだと思ったのだ。

さつきと恋愛したって青峰は恋を終わらせたりしない。
仮に恋が終わってしまっても、さつきへの愛はずっと残るのに、さつきは自分との関係を変える事を嫌がった。

それがさつきの意思で、さつきは黄瀬を選んだのだから仕方のないことだと、だから今のままの幼馴染でいよう、青峰はそう決めている。

決めているけど、幸せそうな黄瀬を見ているとやっぱり嫉妬はする。

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