黒子のバスケ

□坊ちゃまの言う通り!V
1ページ/3ページ

桃井さつきは綺麗だ。
それは大体の人が言う事だが、青峰大輝も心の中ではそう思っている。
だけど、それを口にしたことはない。
それは単純に青峰がそういう性格だからだ。

そしてさつきは基本的に自分が心を許した人しか信用しない。
それはなぜかと言えば、青峰家に引き取られてから影で使用人に色々言われていたからだと思う。
人間の表と裏を幼い頃から見ているから、人を基本的に信用しない。

だから人から綺麗だとか褒められても笑顔でお礼を言うけれど、その言葉自体を信じていない。
その言葉を信じていないから、自分を綺麗だと思っていない。

その事を危険だと青峰が思うようになったのは、幼馴染の赤司征十郎、緑間真太郎、紫原敦、黒子テツヤ、黄瀬涼太の5人の男にさつきを会わせてからだった。


あれから毎日、何かしらのプレゼントがさつきの元に5人から送られてくる。
それをさつきは彼らが自分に好意を持っている、ではなくて私に気遣ってくれるくらい大ちゃんと仲がいいんだね、と変換しているから困る。

かといって毎日やつらに手書きのお礼状を送っているさつきにやつらの気持ちを教えてやる義理もない。

ないけど…いらつく…!

そんな風に思いながら、青峰は今朝届けられた赤司からの花束、紫原からのお菓子、緑間からの牡牛座の今日のラッキーアイテムの等身大のトトロのぬいぐるみ、黒子からのヘアケアセット、黄瀬からのアクセサリーを睨みつける。

赤司の贈ってくる花束はでかいし、等身大のトトロのぬいぐるみなんて、邪魔なんてレベルじゃない。
お菓子は青峰もさつきも紫原ほど食べないから全然減らないし、サプリや化粧品、ヘアケアやアクセサリーもたまっていく一方だ。

もっと有意義に金を使えあのバカども、そう思いながら青峰は
「さつき、もう学校いくぞ。」
と等身大トトロに嬉しそうに抱きついていたさつきの制服を引っ張る。

トトロに抱きついていたさつきは可愛かったしトトロに罪はないが、見るたびに緑間の顔がちらついてムカつく。

とは言いつつ、こっそりトトロに抱きついてたさつきを携帯で撮ってたりして。
なんてそんな事はさつきに分からないようにしつつ、青峰はトトロから離れたさつきと一緒に学校に行く。


青峰大輝の婚約者になったことで、さつきは今までさつきを見下していた女子から一気に媚びられるようになったけど、さつきはそういう人を相手にしない。

男子はもともと青峰が怖くてメイドさんに手をださなかったけど、メイドさんから婚約者になったさつきに話しかけることすらしなくなった。

それでクラスは違うものの、さつきは学校でも青峰と常に一緒にいる。
家でも学校でもさつきと一緒なんて割りとオレは幸せじゃね?
なんて、死んでも言わないけどなと思いながら青峰はさつきと登校する。

「あ、大ちゃん、今日は私、学校終わった後でおばさまと一緒にエステに行くから一緒に帰れないよ。」

くだらない話をしている最中に、ふいに思い出したようにさつきに言われた。

「あっそ。
それじゃババアが迎えにくんの?」
「そうだけど…おばさまをババアなんて言っちゃダメでしょ。」
さつきは呆れている。

でも青峰の母はさつきを実の娘の様に可愛がっていて、実息子の青峰の事は落としまくりだ。
青峰だってババアと言いたくなる。
その青峰の母はいつもエステとか美容院とかブティックにさつきを連れて行きたがったけど、さつきは常に遠慮してた。
それが青峰の婚約者になって、母親から
「綺麗でいるのもあなたの勤めよ。」
と言われ、そういうものに行くようになった。

まぁババアがさつきと出かけるのを楽しそうにしてるからいいか、そう思っていた青峰は
「気をつけて行けよ。」
と告げて、さつきの手をギュッと握る。
さつきは嬉しそうに笑って
「うん!」
と返事をして青峰の手を握り返した。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ