黒子のバスケ

□ささやかな祈り
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その日の夜、青峰の部屋にさつきが来た。
「なんだよ、お前の彼氏が怒るぞ。」
部屋に入ってきたさつきに青峰はベッドに寝転んだままでさつきの顔を見ずに言った。

「うん、そだね。
だからもう、ここに来るのは今日が最後。」
思わず起き上がったら、さつきは困ったような顔で青峰を見ていた。

「ごめんね、黙ってて。
笠松さんってね、女の子が苦手なんだって。
それで、きーちゃんから苦手を克服するために協力して欲しいって言われて、何度も笠松さんと会ったの。
時間はかかったけど、女の子苦手なのは克服できたって頃にね、告白されたの、笠松さんに。
一度はお断りしたの。
だって敵同士だし、私、大ちゃんのことがとても心配だったから。」

だったら何で付き合うことになったんだよ?!
青峰は叫びたかった。
口には出さなかったけどその気持ちは伝わったんだろうか、さつきは話を続ける。

「その時は笠松さんも納得してくれたみたいだったんだけど、でも私、笠松さんの事、素敵だなって思ってた。
その気持ちは本当だったの。
だからその後もう一度、笠松さんからやっぱり諦められない、好きだって言われた時、笠松さんが引退して、それから大ちゃんが元に戻ってくれるまで待ってくれるならって…」

「あー、もうそういうのいいから。
別に興味なんかねぇし。
ま、幸せにな。」

なんで付き合うことになったんだと叫びたかったけど、実際になんで付き合うことになったのかなんて聞きたくない。
だから青峰はさつきの話を遮った。

「そだね、人の恋バナなんて聞いても面白くないよね。
私、もうここには来ないね。
自分が幸男さんの立場だったらやっぱりいくら恋愛感情がないとは言え、恋人が異性の部屋に行くとかいやだと思うから。
だけど、私にとって大ちゃんはいつまでたっても幼馴染だよ。
大事な、大事な人だよ。
それだけは絶対に忘れないでね。」

さつきは青峰に小さく手を振って青峰の部屋を出て行く。

「ざっけんな、何が幸男さんだよ!
何が恋愛感情がないとはいえだよ!
オレの方は恋愛カンジョーがあんだよ!
さつきが好きなんだよ、もう遅せーけど。」

青峰は手元の雑誌を自分の部屋のドアに投げつけた。
それはドアに当たって大きな音をたてたけど、さつきは戻っては来なかった。
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