黒子のバスケ

今はまだ、このままで
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マジバで黄瀬とさつきは向かい合っていた。
テスト期間前で部活がないので、黄瀬はさつきに勉強を教えてもらう事になっていた。
黄瀬は学校の図書室で勉強するつもりだったのだが、さつきに
「マジバにいこうよ!」
と言われ、マジバに来ていた。

そして数学の試験範囲の分からないところを全て教えてもらったところで少し休憩をすることにしたのだ。

「なんで図書室じゃなくて、マジバにしたんスか?」
黄瀬はアップルパイを食べているさつきを見ながら自分はポテトを摘む。

「うーんとね…」

さつきはしばらく言いずらそうにしていたが、意を決したように顔を上げた。
「最近ね、赤司くんとミドリンが変なの…。」

「そうっスね…」
黄瀬は鈍感な桃っちでもさすがに気が付いたのかと内心思いながらも頷いた。


一ヶ月ほど前から赤司と緑間のさつきに対する態度があからさまなのは、黄瀬でなくても気が付いている。

もともと、参謀的な役割を担っていたさつきと、主将の赤司、副主将の緑間はよく三人で打ち合わせをしていた。
そして赤司も緑間もさつきに好意を持っていた。
でも部活に支障がないようにと、そういう感情を表に出していなかったはずなのに、最近は赤司と緑間でさつきを取り合ってるように見える。

発端は一ヶ月ほど前に部活が終わった後、部員たちにさつきがスポーツドリンクを配っている時だった。

一軍選手全員のドリンクボトルの入ったかごを抱えながらさつきはドリンクを配っていた。

練習でバテてはいるものの、そのかごがとても重いものであることはさすがに黄瀬も理解しているので、もらったドリンクを飲み干した後でさつきを手伝うために声をかけよう思った時
「貸せ、桃井。
こんな重いもの、女の細腕に持つものではないのだよ。」
さつきからスポーツドリンクを受け取った緑間がドリンクも飲まずにさつきに向って手を差し出したのだ。

「大丈夫だよ、いつもやってることだもん。
それよりミドリンはきちんと水分とって、ダウンしてね。」

さつきはそれに対し、緑間を心配する。

重いものを持ってる時に声をかけられてさつきが手伝いをお願いするのは、無駄に体力のある青峰か、怪力の紫原だけであって、この二人以外の部員からは何を言われても絶対に手伝わせないし、二人がいなかったりして声をかけなければ自分でやる。

それでも手伝いたいと思うのが、まぁ可愛い女の子を前にした男の気持ちなワケで。
断られるのが分かっても声をかけてしまう。
さつきの口癖ではないけれど、男の子って単純、なのだ。

今も緑間が断られたわけだが、黄瀬はそれでも声をかけようとした考えていたら
「だからお前の細腕に無理をさせるわけに行かないのだよ。
こういう時は素直に甘えればいいのだよ。」
緑間はスッとさつきの手からかごを奪って、一軍の選手に渡していく。

「ちょ…待ってミドリン!
手、手!
左手に何かあったら困るでしょ!
そんな事しないでいいから!」

緑間が左手を大事にしてる事を知ってるさつきは慌てて緑間の手からかごを奪い返そうとする。

しかし他の部員は驚いていた。
あの緑間が…あの緑間が『素直に甘えればいい』だと?!
ツンデレのくせに…っつかツンデレはそこで
「ふん、おまえのためじゃないのだよ!
お前はとろいからな、オレがやったほうが効率がいいだけだ。」
とか言わないとだめだろ?!

練習で疲れてる上にツンデレのツンがない貴重な緑間に部員全員の思考がおかしくなったその時
「真太郎、さつきのことは僕が手伝うからお前はテーピングでも巻きなおしてきたらいい。」
赤司がスッと立ち上がってさつきの肩を抱いた。

ええええ?!?!
どうしちゃったの、主将?!
主将、そういうキャラじゃないでしょ?!
部員全員が心の中でだけつっこむ。

だけど緑間だけは冷静に赤司を見て言った。
「お前よりもオレの方が先に桃井を手伝ったのだよ、だからお前こそ座っていろ。」

赤司と緑間が睨み合う。

「いいよ、手伝いはなくても大丈夫だから。」
二人が睨みあってる間にさつきが二人の間に割って入り、緑間の手からかごを奪ってにっこりと笑った。

「二人ともしっかり休んでて、まだこれから自主練するんでしょう?
私なら大丈夫だから。」

それ以上は何もいえなかったのか、二人は黙って座っていた。
そんなことが、あれからちょくちょくある。

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