黒子のバスケ

諦めましたよ どう諦めた 諦めきれぬと諦めた
2ページ/3ページ

自分達の才能が開花し、チームがバラバラになって、青峰が練習に出なくなり、黒子がバスケ部を辞めた。

それでもさつきはいつも情報を集め、分析し、気を引き締めてといい、頑張って言って自分達をベンチから送り出して、お疲れ様、おめでとうとベンチで笑顔で迎えてくれた。
毎日部活が始まる前に青峰を探し、赤司をサポートし、紫原に才能がないから辞めればと言われた部員を追いかけ、青峰も黒子もいなくてつまらないという黄瀬の話し相手をし、自分のテーピングを巻いてくれた。


そんな中、緑間は一度だけさつきに自分の気持ちをほのめかしたことがある。
あれは5人の中で最後まで進路の決まらなかった青峰が、桐皇学園に進路を決めたと知った時だった。

『お前はどこの学校に進学するのだよ?
オレは、秀徳高校だ。』

『恋愛じゃない、かっこいいとも思えない、だけどずっと一緒にいる。』
青峰の事をそう思ってるさつきに、それでも緑間の精一杯の想いをその言葉に込めた。
(秀徳高校に一緒に来て欲しい)


「あ?
さつきは桐皇に進学すんに決まってんだろ?」
だけど、そこに青峰が現れてさつきの代わりにそう言った。

「桐皇の監督から。
桐皇の指定校推薦用の願書だとよ。」
青峰はさつきに封筒を渡した。

「ありがと。
まだ、桐皇に進学するとは言ってないけどね。」

「どうせ桐皇に進学すんだろ?
んで、監督がオメーと少し話してーって進路指導室で待ってる。」

「ごめんね、ミドリン、ちょっと言ってくるね。
秀徳高校か、東の王者で伝統のある学校だね。
ミドリンにぴったりだと思うよ。
おめでとう。」

さつきはいつだったか緑間が息をするのも忘れるほど見つめてしまった時と同じ笑顔を緑間に見せて、きびすを返した。


「緑間、お前さつきが好きだろ?」
その後姿から目が話せない緑間に青峰が話しかけてくる。

「だとしたら、なんだというのだよ。」
緑間は角を曲がってさつきの姿が見えなくなってから青峰に視線を移す。

「さつきはオレんだ。
もしさつきが仮にお前を受け入れて付き合い始めたとしても、それでもさつきはおまえのもんじゃなくてオレのもんだ。」
青峰は今はもう、バスケをしてる最中でも見せない、好戦的な顔をしていた。

緑間も自然と好戦的な顔になる。
「その自信はどこから来るのだよ?」

「自信じゃねぇよ、確信だ。」

「お前など、桃井に釣り合うわけないだろう。」

「お前なら釣り合うって言うのかよ?」

「お前よりはオレの方がましなはずだ。」

「それでもさつきはオレのもんだ。」

緑間は拳を握っていた。
いつもさつきがテーピングを巻いてくれた手。
テーピングで大事に保護してきた手。
美しいシュートと称される3Pを打つための手。
だけどその手で緑間は青峰を殴りつけたいと思った。

唇を噛み締めて、拳を握ってる緑間を青峰は一瞥し、去っていく。

……やっぱり無理だ。
殴れるわけがない。
さつきが三年間、自分と共に大事にしてくれたこの手で、青峰のことを殴れない。

去ってく青峰の背中をにらみつけることしか、緑間にはできなかった。


さつきが桐皇に進学を決めたと聞いたのは、その三日後の事だった。

次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ