黒子のバスケ

□坊ちゃまの言う通り!U
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さつきと結婚するから。

両親にそういった時、青峰は両親がさつきとの結婚を反対するのなら家を出る覚悟もしていたが、両親は
「さつきちゃんが本当の娘になる!」
と喜んでいて拍子抜けしたくらいだった。

青峰はまだ高校一年生だから実際に結婚できるわけでもなく、さつきとは婚約したという形になるわけだけど、青峰はそれで充分だった。

さつきは急に変わったこの状況に嬉しいというよりは戸惑っているようだったが、青峰が小遣いから安物の指輪を買って渡してやった時、嬉しいと言って泣いていた。

『青峰家のメイド』から『青峰大輝の婚約者』になってしまえば、もうそれだけでさつきに手を出せる人間なんてそうはいない。
だから青峰は学校でもその事を隠そうともしなかったし、さつきに坊ちゃまと呼ばせずに大ちゃんと呼ばせていたし、公の場にもさつきを連れて行くようにした。


そんな青峰にはさつき以外に幼馴染が5人いる。

赤司財閥総帥の一人息子の赤司征十郎、緑間総合病院の院長の長男の緑間真太郎、紫原製菓の一人息子の紫原敦、KISE化粧品の長男の黄瀬涼太、黒子製薬の長男の黒子テツヤ。

さつきもこの5人のことは知っているが、青峰はこの5人と会う時にさつきを同席させたことはない。

幼い頃からずっとそうだった。
だけど、5人もさつきもお互いの存在は知っている。

さつきは別格にしても、青峰はこの5人の幼馴染のことは両親と同じくらいには大事な連中だと思ってるし、信頼できる人間だとも思っている。

だけどさつきに関しては別だ。
この5人とでも、相手は男だというそれだけでさつきと触れ合わせたくない。
さつきは青峰がこの5人と遊ぶ時に一緒に行きたがったし、5人も青峰の幼馴染のさつきと遊びたがったけど、青峰は
「さつきは女だから男とは遊べねーんだよ!」
と断っていた。

幼稚な独占欲と言われてしまえばそれまでだが、それでも小さい頃からずっと、さつきと5人が仲良くなるのを意図的に避けてきた。
けど、婚約した以上、そうも行かないだろう。
紹介くらいはしないといけない。

それで青峰は今日の赤司財閥主催のパーティにさつきを同伴していく事にした。

ドレスコードはセミフォーマルだというので、父の代理である事もあり、青峰はタキシードを着用しているものの
「なんかほんと…こんなにタキシードが似合わない子、見たことないわ。
あんた、さつきちゃんと結婚する時どうするのよ?」
と母がため息をついたほど、似合っていない。

「うるせーな、黒以外のタキシードなら平気なんだよ!」
「白なんかもっとあんたに似合わないわよ!!」
と母と言いあいになるほど似合ってない。


その時、準備が終わったのかさつきが部屋に入ってきた。
「準備が遅れてすみません。」
入ってきたさつきに青峰の母は満面の笑みを浮かべる。

「本当に綺麗よ、さつきちゃん。
ねぇ、本当に結婚相手が大輝でよかったの?
あなたならもっといい男性がいそうじゃない、こんな悪人面の大輝じゃなく、赤司君とか緑間君とか品があって理知的な子が。」
そう聞いてしまうほど、さつきは綺麗だった。

青峰の母がオートクチュールで作らせたカクテルドレスは青峰の髪に合わせたかのような濃紺で、肌の色が白く、髪の色も淡いさつきを引き立てている。
丈は膝が隠れるほどでそんなに短くはないが、上半身はビスチェタイプになっている。
大きく開いている胸元にはダイヤのネックレスが飾られていて、髪はアップで耳元にはネックレスと同じデザインのイヤリングが揺れている。

綺麗だ、青峰はそう思った。

だけど母の言い分はあんまりだと思う。
オレはあんたから生まれたんだよ!
文句を言ってやろうとした青峰だったが、さつきが
「すみません、おば様。
でも私、どうしても大ちゃんが好きなんです。
大ちゃんじゃないとダメなんです。
青峰家のたった一人のご子息なのに、親のいない私なんかが婚約者ですみません。」
と申し訳なさそうにしているので
「そんな事ないわ!
あなたこそ、大輝にもったいないわ!」
と母はさつきに言い聞かせている。

「うっせ。
もう行くぞ、車回してあるし。」
青峰は放っておくといつまでこんな茶番を続けそうな母をさつきから引き離し、さつきに向って腕を差し出した。

さつきはそんな青峰に顔を輝かせ、自分の腕を青峰の腕に絡めた。
「大ちゃんがエスコートしてくれるなんてすごく嬉しい。」
「うるせーな。
それより会場ではぜってーオレから離れんじゃねぇぞ!!」
青峰はさつきに何度も言い聞かせていた。

こんな綺麗なさつきを婚約者として隣にいさせることができるのには優越感を抱いているが、あの5人の幼馴染にさつきを会わせる事には危険を感じながら。
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