黒子のバスケ

□この勝利を君に捧ぐ
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高校一年生のWCで誠凛が優勝した後、キセキの世代も変わった。

そして彼らが絆を取り戻しての始めてのIH。
桐皇は決勝まで進み、決勝戦で誠凛と対戦している。

第4Qで残り時間、10秒。
98-99で誠凛がリード、現在ボールは誠凛がキープしている。

火神にパスが渡った。
青峰と火神の1ON1。
さつきも、桐皇学園のメンバーも祈るような気持ちだった。

青峰にも火神にも隙がないように見えたが、青峰がパッと手をだすと同時に、火神の手にあったボールが火神の手から弾かれた。
弾んでいくボールをコート上の誰もが追っていくが、それを手にしたのは若松だった。

「どっせーい!!」
若松がパスを出す。
その先にゴールに向って走り出す青峰と、青峰を追っていく火神をさつきは見た。
ボールを受け取った青峰が飛ぶ。
それを阻止するように火神も飛ぶ。

「大ちゃん!!!
お願い、勝って!!!」
さつきは立ち上がって叫んでいた。

火神の手が青峰の手からボールを弾こうとしたその瞬間、青峰は空中で体を捻り、桜井にパスを出した。
「青峰がパスだと?!」
会場が騒然となる中、桜井がシュートを放つ。
それが綺麗な放物線を描いてゴールに吸い込まれていくのと、試合終了のホイッスルがなるのと同時だった。
電光掲示板の桐皇学園のスコアが変わる。
101-99。
会場が歓声に包まれる。

若松が、桜井が、青峰に抱きついた。
さつきの目から涙がぽろぽろこぼれる。
そんなさつきにハンカチを差し出した監督の原澤も涙目だった。

新鋭の暴君・桐皇の始めてのIH優勝。
そしてあの青峰がチームメイトを信じてパスをしたこと。
若松や桜井に抱きつかれながら笑ってる青峰に、さつきは受け取ったハンカチで涙をふくけれど、その涙が止まる事はなかった。

そんなさつきを青峰が振り返る。
さつきに向って差し出された青峰の拳に、さつきは泣き崩れていた。


「色々苦労はしました。
自分を含めて我の強い連中で構成されたチームですから。
けど、勝ちたい、優勝したい、その気持ちだけは部員全員の共通の気持ちで、それが今回の優勝に繋がったと思います。」
若松が優勝校主将としてインタビューに答えているのをさつきは泣き腫らした目で見ていた。

同じく泣き腫らした目をした桜井がそんなさつきに保冷剤をタオルで包んだものを渡すが、さつきはそれを一度は受け取って桜井の目に当てた。
「本当におめでとう、りょーちゃん!
最後のブザービーター、すごくすごくかっこいかったよ!」
「どうもありがとうございます!」
桜井の声が涙声で、さつきもそれにつられて涙目になった時、若松のインタビューが終わり、エースの青峰が呼ばれた。

青峰がさつきの頭にポンと手を置くと、インタビュアーの元に行く。
「青峰くん、おめでとうございます!
WCでは初戦で敗退した誠凛高校に勝っての優勝ですが、リベンジを果たした気分はどうですか?」

「リベンジとかそんなの関係ねぇ。
あの時の負けがなかったら今もなかった、それだけだ。」

「青峰さんは揺らぎないですね。」
「本当だね、こんな時でも敬語が使えないの。」
桜井とさつきが笑った時だった。

「この勝利を伝えたい人はいますか?」
インタビュアーの質問に答えた青峰の言葉に会場が沸いた。

「今年のこの優勝は、オレのバスケ人生の中でオレに関わってくれたすべての人に捧げたいと思います。
だけど、来年の優勝はさつきただ一人に捧げる。
来年も優勝っすから、そしたら結婚すんぞ、さつき。」

桐皇のメンバーはみんな驚いてさつきを見る。
さつきは意味が分からなくて呆然としていた。
そんなさつきに向かって青峰は笑顔で拳を差し出した。
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