黒子のバスケ

Others
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オレの通う海常高校のバスケ部は全国区のバスケ部だ。
そこの主将・笠松幸男とオレは三年間ずっと同じクラスだ。
笠松は男のオレの眼から見ても男気のあるかっこいい男だ。
だけど女子が苦手で、クラスの女子と話してる姿すら見た事がない。

そんな笠松だが、恋人だけは別だそうだ。
東京のバスケの強い…とーおー学園だったかな?
そこのマネージャーの女の子と笠松が付き合ってると聞いた時は、オレはびっくりした。
体育祭でも学園祭でも女子と話したりしないというか、できるだけ女子を避けていた笠松に彼女ができるのか?!
そう思っているオレがその笠松と彼女に出会ったのはある日の日曜日だった。


「あ、笠松じゃね?」
部活が午前中で終わり、せっかく天気がいいのにもったいないと部活の友達と二人でぶらぶらと学校近くのショッピングセンターを歩いていたら見慣れた男が私服姿で歩いていて、思わず声をかけていた。

「あ、バスケ部のキャプテンの笠松君?」
オレの友達は割とフレンドリーなので初対面だけど校内ではそれなりに有名で顔の知られてる笠松に話しかけていた。

「あー、田中か…えと…あとは…?」

「田中と同じ部の鈴木です。」

「どうも…笠松です。」

オレと鈴木に軽く頭を下げた笠松の横からひょこっと顔を出した女の子がいた。

この子が笠松の恋人?!
ピンクのロングヘアで胸がでかい…超絶に可愛い女の子にオレと鈴木は驚いて、そして自然と彼女に釘付けになってしまったオレたちは、笠松に睨まれてるのに気がついて慌てて彼女から視線をそらす。

「幸男さん…お友達?」
彼女が笠松を見上げた。
声も可愛いんだけど…っつか女の子が苦手な笠松がこんなザ・女の子的な女の子の彼氏ができるのか…?!
オレは激しく疑問に思う。

ついでに笠松に睨まれて一度は視線をそらしたものの、オレの横で未だに口を半開きにして彼女を見つめてる鈴木を殴ってもいいだろうか?

「ああ、同じクラスのやつだ。」
笠松は鈴木の様子には気がつかずに彼女に向って頷いた。

……マジで普通に話してるよ、あの笠松が!
驚いてるオレにその子がぺこりと頭を下げた。
「初めまして。
桃井さつきと申します。
いつも幸男さんがお世話になってます。」

頭を下げる仕草まで可愛らしい桃井さつきちゃんにオレは自然と顔が緩んで
「いえ、こちらこそいつも笠松にはお世話になってます。」
と頭を下げ返していた。

「ちょ…さつき、なにおふくろみてぇなこと言ってんだよ?!
田中もやめろよ!」
笠松が彼女の頭を軽く小突くとオレを睨む。

「ええ?!
なんでそこでお母さんって発想になるかなぁ?!
私、奥さんのつもりで言ったのにな。」
小突かれた場所を手で押さえ、彼女はにっこりと笑って笠松を見上げた。
途端に笠松の顔が赤くなる。

オレも部外者なのに頬が熱くなるのが分かった。
スポーツ推薦で海常に入学したオレは部活に力を入れてて、笠松ほど女の子が苦手なわけじゃないが、女の子とすげぇ接点があるわけでもない。
だから、彼女のその笑顔に、部外者なのに顔が熱くなってしまった。
それくらい、笠松を見上げる彼女は可愛らしかった。

「馬鹿か…」
笠松は赤い顔のままそういったけど、オレたちの存在なんか忘れたみたいに彼女をギュッと抱きしめた。

えええ?!
笠松ってそういうことできるやつだったのか?!

唖然としてるオレと鈴木をもうすでにない存在としてるのか、笠松は
「たまにさつきはすげぇこと言うよな。
そりゃ、いつかはそうなって欲しいとは思うけどよ…。」
と赤くなって呟いてる。

お前さ、それだけ言えるのになんでクラスメートとは話せねぇんだよ?

「うん、私もそう思ってるよ。」
さつきちゃんは可愛らしい声で言って笠松の背中に手を回している。

オレは呆けてる鈴木のわき腹を軽くつつく。
それでも呆けている鈴木をオレは静かに引きずって、その場を後にした。



次の日、教室に入って自分の席に着いたら、笠松がオレの席までやってきた。

「おはよう。
昨日は悪かったな…。
なんか気を使わせたみてぇで…。」
笠松は頬を赤くしながらも申し訳なそうな顔をしている。

っつか、目の前であんないちゃつかれたらこっそりその場を去るしかないだろ?
だけどそんな事を本人を前にして言えるわけねーから代わりに
「お前、なんであんな可愛い彼女いるのに女が苦手なんだよ?」
と聞く。

笠松は
「お前もさつきを可愛いと思うか?」
と聞いてきた。

「は?!
普通に可愛いだろ?!
しかもスタイルめっちゃいいし、グラビアアイドル並じゃねーか!
お前はあの子を可愛いとは思わないのか?!」
思わず大声を出したオレはクラス中の注目を浴びていて
「声がでかいって!!」
笠松に睨まれた。

「わりぃ。」
すぐにクラスの連中はオレ達に興味をなくしたようだったので、オレは話を続ける。

「なんか女の子女の子した感じの子だったじゃねぇか。
ボーイッシュで女を感じないとかそういうタイプじゃなくてさ。」

「ああ。
見た目はな。
でもあいつ、あれで強豪のバスケ部のマネージャーで。
初めて会ったのは試合の時だったけど、あいつのデータ分析でうちは随分苦戦した。
実際、IHでは負けたわけだし。
だから女子っていうより『バスケ部員』ってくくりだったんだよ、オレの中では。
だから意識しないで話せたっつーか…。
だけど、見た目は可愛いんだよな…森山とか小堀や早川まで可愛い可愛いって騒ぐし、黄瀬は桃っちは帝光時代からすごいモテてたって言うし。
けど、とにかく、あいつは女なのにバスケが好きで。
だから最初は女なんて意識してなかったけど、話するたびに可愛い女の子なんだよな…って思うようになって、だんだん意識するようになって、告白したら、あいつが
『私も笠松さんが好きです。
ずっと憧れてました。』
なんて言うから…もうなんっつーか、愛しいっつか…オレにはこいつしかいねーっつか…他の男になんか渡したくねーっつか…」

「あー、分かった。
要するに、ベタボレってことね、彼女に。」
延々と続きそうな笠松の話を遮って結論を言ったら、笠松は
「まぁな。」
と頷いた。

きっぱりとしたその潔さはやっぱ男のオレから見ても男気があってかっこいい。

「すげぇお似合いだよ、お前ら。」

そう告げたら笠松は嬉しそうに笑った。

幸せにな。
その笑顔を見てると心の底からそう思えた。

笠桃Ver.END

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