黒子のバスケ

けして苦労はさせやせぬ
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桐皇学園は全国から選手を集めていて、そのために寮もあるような学校だけれども、それなりの進学率も誇っている。
今吉も諏佐も国立の名門大学に入るために、バスケ部と勉強を両立している。

しかし、今までは寮の部屋も隣同士でいつも部活の後、一緒に勉強していた諏佐が、最近は部活の後で近所の図書館で閉館時間まで勉強している。
マネージャーの桃井さつきと一緒に。

閉館時間になった後、諏佐はさつきを家まで送り、学校に戻ってくる。
なんでそんなことをしているのかといえば、諏佐とさつきが付き合い始めたからだ。

それを知ったとき、今吉は驚いた。
幼馴染の青峰を除けば、桐皇のバスケ部でさつきと一番接点が多いのは自分だと思っていた。
そして、レギュラーの中では諏佐が一番、さつきとの接点が少ないと思っていた。
なのにいつの間にか、諏佐とさつきが男女のお付き合いを始めたからだ。

「今吉、主将のお前には報告しておく。
桃井と付き合うことになった。」
諏佐からそう言われた時に
「どこに?」
と聞いたのは本気でそう思ったからだ。
それくらい、今吉の中で諏佐とさつきが付き合うなんてありえないことだったのだ。

「場所じゃない、付き合うって恋人になったってことだ。
だけど部活に支障は出さないようにする。
約束する。」
そんな自分に諏佐は約束すると再び口にする。

「ああ…」
今吉はそれしかいえなかった。


その日から今吉は諏佐とさつきを注意深く見ているが、部活中の二人は本当に今までと変わらないように見えた。
だけど部活が終われば、二人は一緒に連れ立って部室を出て行く。
そして、図書館に向うのだ。

手を繋いでいるわけでもない、だけど二人の間には少しの隙間もない。
手を繋がないまま、それでも二人は寄り添っている。

ワシの方が絶対に桃井に近かった。
なのになんで諏佐なんや?
どこで接点があったんや?

その後姿を見ながら今吉の胸のうちにどろりとした感情がわきあがってくる。

なんだろう、この気持ちは。

桃井は頼りになるマネージャーで、諏佐は部員の中では一番頼りにしてるチームメイトで。
なのになんで二人を祝福する気持ちになれないんや、ワシは。

今吉の疑問は、ある日、部室でさつきと練習試合の打ち合わせをしていた時に唐突に解ける。

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