黒子のバスケ

愛さずにはいられない
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今日は帝光中学の一軍の練習試合の日だった。
と言っても、今回はレギュラーは一人も試合に出ない。

一軍に所属しているとはいえ、キセキの世代なんて言われている五人は能力が突出している。
それに幻のシックスマンが入れば完璧なわけで、帝光で一軍の試合といえば、この六人がローテーションで出場する。

だけどそれでは他の一軍メンバーは試合もできずに面白くないだろう、監督のそういう気遣いからたまにレギュラーの出ない一軍の練習試合が組まれる。
今日がその日で、帝光の一軍メンバーは練習相手の中学に来ていた。

キセキの世代は全員、帝光に残って二軍・三軍の練習に顔をだしたり、自主練をすることになっている。

ただ、マネージャーのさつきは他に二人のマネージャーと共に練習試合に同行していた。


二軍の練習風景を見ていた赤司はハーフパンツのポケットの中の携帯が震えていることに気が付いて携帯を手にする。
一軍の監督がいない時のみ、赤司と緑間とさつきには部活中の携帯電話の携帯が許されている。

自分に連絡をしてきたのが監督だったので、赤司は通話ボタンを押した。

「はい。」
「赤司、今日の練習試合は中止だ。
桃井が脳震盪を起こして病院に運ばれた。
部活も今日は急遽中止して、全員帰宅させろ。
俺はマネージャーの田中と桃井の病院に付き添うが、佐藤コーチとマネージャーの西沢が一軍選手と共に学校に戻るから、二人から詳しい事情を聞いてくれ。」
監督は焦ったような声でいい、一方的に電話を切る。

さつきが病院に運ばれたと聞いて、普段は冷静沈着な赤司の顔に動揺が走る。

副主将の緑間は三軍の練習風景を見るため青峰と共に別の体育館にいて、そのばにいた黄瀬と紫原は赤司のその様子に気が付かなかったが、黒子が気が付いて訝しげな顔をした。
それに黄瀬が気が付いて
「黒子っち、どうかした…」
と聞きかけて赤司の様子がおかしい事に黄瀬も気が付く。

赤司は険しい顔で緑間の携帯に電話をしていた。

「赤司か、どうかしたか?」
電話に出た緑間に赤司は
「至急、部員を帰宅させて青峰と一緒に部室に戻ってきてくれ。
さつきが脳震盪を起こして病院に運ばれた。」
と早口でまくし立てた。

「なぜなのだよ?!」
電話の向こうで緑間も動揺していたが、かまわず電話を切った赤司はレギュラー以外の部員を帰宅させ、部室で待機していた。


やがて一軍の選手、マネージャー、コーチが戻ってきた。
一軍の一年生には泣いてる人もいたし、マネージャーも泣き腫らした目をしていて、コーチと多数の一軍選手は怒りの形相をしている。

そしてさつきが脳震盪を起こした理由を聞いた赤司たち6人も怒りを抑える事ができなかった。

今日の練習試合の相手は私立の野球が強く、最近はバスケにも力を入れ始めてる男子校だった。
着替えるだろうからと女子三人が更衣室に案内される途中で、更衣室に案内してくれているその学校の生徒が3人のマネージャーに言ったそうだ。
「キセキの世代のいない帝光なんて、たいしたことないでしょ?」

「そんな事ありません。
確かにキセキの世代って呼ばれている五人はすごいけど、それ以外の一軍の選手だって努力してるんです。
あの五人がすごすぎるだけで、その影できちんと努力してるのが帝光の一軍選手です。
そんな簡単に負けませんから。」
それに対して、さつきはそう返したそうだ。

それにかちんときたらしい、生徒が
「偉そうに、たかがマネージャーのくせに。
キセキの世代ってイケメンばっかだし、どうせあんたもイケメン目当てのマネージャーなんだろ?
イケメンも胸でかい女がすきなんだなー。」
と言ったそうだ。

「私の事はいくら悪く言ってもいいけど、みんなの事を悪く言うのは許せない!」

怒るさつきに根拠のない罵詈雑言を浴びせ、それをさつきに理路整然と言い返された生徒は頭に来てさつきを突き飛ばし、その結果、さつきは壁に強く頭を打って気を失ったそうだ。


「あんな侮辱されたの、初めて…!」
マネージャーは思い出したのかまた泣き始める。
その気持ちは六人も同じだった。

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