黒子のバスケ

最後の恋
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電子音が鳴ったのでわきの下から取り出した体温計を見て森山は顔を顰めた。

「39℃。
子供の頃、インフルエンザになった以来の高熱だな。」
ぼそっとつぶいたら、母親が
「何言ってるの、いくつになっても親にとって子供は子供でしょ?
学校には連絡しておいたからゆっくり休んでなさい。
母さん仕事行くけどおかゆ作ってあるから、お昼はそれ食べて薬を飲みなさい。
だけど馬鹿は風邪引かないはずなのに、バスケバカのあなたが風邪引くなんておかしいわね。」
と体温計を見てため息をついた。

「いいんだ、これは運命を手にした結果なんだから。」

「熱で頭おかしくなったのかしら、この子?
まぁいいわ、行って来るわね。」
首を傾げる母親を見送って、自室に一人になった森山は目を閉じる。


一昨日、東京のスポーツショップで会った桐皇のマネージャーの桃井さつき。
選手の自分に傘を貸し、自分は雨の中びしょぬれで帰っていった女の子。

その子が熱を出したと聞いて、森山は黄瀬たちと共に彼女の家にお見舞いに行った。
その時、以前ネットで見た風邪のうつし方を参考にさつきにキスをした。
舌と舌を絡ませあうようなディープなキスを。
それでさつきの風邪をうつしてもらおうと思ったのだ。
ネットでそうすれば風邪はうつると書いてあったし。

その後、さつきは真っ赤になってベッドに潜り込んでしまい、青峰と黄瀬と緑間と透明少年には
「あんた一体なにしてんの?!」
と怒られた。

「彼女の風邪を、オレにうつしてもらおうと思って。
ネットにこうすると風邪はうつると書いてあったし、風邪は人に移すと治るんだろ?」
と答えたら、
「あんたのネット知識が間違っているっス!
いうか、そもそも風邪とか何とか関係なく、対して親しくもない人にキスはしませんっス!!」
と黄瀬に絶叫された。

「オレはこの子が好きだし、運命だと思ってるし、傘も貸してもらったから親しくもないわけじゃない。」
と言ったら青峰と黒子と緑間から説教をされた。

だけどさつきが
「もういいじゃない、森山さんだって私に治って欲しいと思ったからしたことなんだから。」
と庇ってくれて、青峰は
「お前、お人よし通り越してバカだな。」
とあきれていたけれど森山だけは帰された。
さつきは他の面々にも帰るように言ったけど、あいつらは残った。

こういう時、付き合いが長いって羨ましいと森山は思った。

あの七人の間にそれなりの確執があったことはなんとなく分かるが、それでも彼らが繋がってるのは、彼女がいたからだろう。

緑間も彼女の事を還る場所だと言っていた。
どんなに自分達が変わっても、さつきのそばにいるとただのバスケが好きでやっていた中学生のガキンチョに戻れるという意味なんじゃないか、森山はそういう意味に取った。

そう考えるとあの七人の中に入っていくって中々に大変そうだな、そんな事を考えていたら森山はいつの間にか寝ていた。

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