黒子のバスケ

陽だまりみたいなあなた
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その時、コートでどよめきが聞こえ、日向もさつきもそちらに目を移す。

青峰が高尾のパスを空中で受け取り、そのままゴールにボールを叩き込んだ。
青峰のアリウープに会場は沸く。
高尾と火神と青峰が拳を交わし、笑顔も交わす。

それをみてさつきは自然と笑みを浮かべ
「大ちゃん、本当に楽しそう。」
と呟いていた。

「よかったな。」
日向はその笑顔に自分も自然と笑顔になってさつきに言っていた。

「え?」
「青峰。
随分、楽しそうにバスケするようになったじゃねーか。」
「はい!」

日向の笑顔にさつきはさらに笑みを深めて日向に返事を返す。

「結局さ、なんだかんだ言ってもバスケを好きなら戻って来るんだよ。
オレだってそうだった。」

そのさつきの笑顔が可愛くて、日向は自分の過去を少しだけ、話す気になった。

「え?
日向さん、一時期バスケから離れていたんですか?」
さつきは驚いたように目を丸くする。

「いくら努力しても帝光に勝てないから、だったらもう努力なんかやめようと思ったことがあった。
でも結局、戻ってきたのはやっぱバスケが好きだからだな。
あと、変人な恩人のお陰。
キセキの世代も色々あったみてーだけど、あいつらはそれでもバスケを辞めなかっただけ、すげぇと思う。
青峰だってバスケを辞める事はなかった。
それだけ、あいつ、バスケが好きなんだろ?
だから、桃井はそれを信じて待っててやれたんだろ?
そういう人間の存在が支えになって、青峰はきっとバスケを辞める事はしなかったんだろうな。
そう考えたら桃井もやっぱすげぇよ。」

「日向さん…」
自分を呼ぶさつきの声が涙声だったので日向はぎょっとしてさつきを見る。

さつきは大きな瞳から大粒の涙をこぼして日向を見ていた。
その涙がすごく綺麗で、日向は目を奪われていた。

だけどさつきがぽろぽろと綺麗に涙をこぼしていたのはほんの一瞬だけだった。
「んっ…あっ…あり…ありがとご…ざいます…」
嗚咽をもらしてその合間にいいなら、さつきは両手でごしごし顔を拭いて、それでも溢れる涙に目を真っ赤にして顔をくしゃくしゃにしながら泣いている。
鼻の頭もまっかになって美人が台無しだ。

だけど子供みたいに泣くさつきが、今までみた桃井さつきの中で一番綺麗に、可愛らしく見えるのはどうしてだろう?

「オレ、なんもしてねーよ。」
日向はさつきの頭にポンと手を乗せる。
そしてそっと撫でる。
柔らかくて手触りのいい髪は細くて、この子は女の子なんだなと改めて実感する。

「日向さん…」
自分の頭に触れた日向の手が優しくて、さつきは日向の名前を呼ぶと縋るように日向に抱きついていた。

「桃井っ?!」
これにはさすがに日向もびっくりしたけど、それでもきっとずっとこの子は泣きたかったんだろう、それなのにそれを隠して計算高かったり、強かだったりしながら、ずっと笑っていたんだろうと思ったらこのまま泣かしてあげるくらいいいだろう、そう思った。

日向は左手をそっとさつきの背中に回すと、右手でその頭を優しく撫でる。

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