黒子のバスケ

陽だまりみたいなあなた
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誰が言い出したのかは忘れたけれど、各学校から何人かが集まってストバスをする事になった。

赤司と紫原は学校の規則で草バスケはできないが見学に来るということで、さつきは数日前からうきうきと準備をしていた。

キセキの世代の確執は今はなくなり、みんなはあのころの様に目には見えないけれど温かい何かで繋がる事ができた。
さらにその何かは、キセキの世代のみんなそれぞれが新しいチームで自分の居場所を作った事によって広がって、ストバスの大会にこれだけの人数が集まってくれてさつきはそれを嬉しいと思う。

くじでのチーム分けは黄瀬と黒子と伊月、緑間と今吉と日向、木吉と桜井と笠松、青峰と火神と高尾になって、バランスが取れてるような、取れてないような…面白いチームわけになったねなんてリコと話して…。

こうやって、今までとこれからのチームメイトで楽しくバスケができるなんて、顔が常に微笑を湛えてしまうほど幸せだ。

青峰の方は黒子、黄瀬、緑間、紫原、赤司みたいにチームに溶け込んでいたりチームをひっぱったりと言う感じではなくて、チームメイトとの壁があるように感じるし、練習をさぼることもまだ多々あるけれど。
それでもああやって笑顔でバスケをしている姿を見れるようになるなんて、すごく嬉しい。

……だから、そろそろ私も前に進まなくちゃ。
いつまでも帝光の時のことを考えるんじゃない、桐皇学園のマネージャーとして、桐皇学園の桃井さつきになることを考えていこう。


リコは木吉の膝を見に行ってしまい、一人でベンチに座りながらそんなことを考えていたら、隣に座った人がいた。

「お疲れ様です、日向さん。
ドリンクどうぞ。」
自分の隣に座った誠凛バスケ部キャプテンの日向順平にさつきはスポーツドリンクを手渡した。

「ああ、サンキュ。」
受け取った日向はドリンクキャップを開けると一気に半分ほどドリンクをのんだ。

「すごい汗。
ちゃんと拭かないと体冷しちゃいますよ?
選手が体冷しちゃだめですよ?」
さつきは今度は自分のスポーツバッグからスポーツタオルを出して渡す。

「どうも。」
そう言った日向がふっと笑った。
「どうかしました?」
「いや、桃井はどこまでいってもマネージャーなんだなぁと思って。
オレなんか他校なのにすっげぇ気にしてくれるからな。」
「バスケが好きなんです。
バスケを楽しそうにしてる人が好きなんです。
だからかな?
それに、誠凛のみなさんには感謝してるんです。
ありがとうございます、バスケが楽しいものだってもう一度、教えてくれて。
新鋭の暴君・超個人主義なんていわれてる桐皇ですけど、今は大分変わりましたよ?
チームワークも出てきた気がするんです。
それは誠凛さんと試合をしたからだと思います。
本当に感謝してもしきれません。」

さつきはにっこりと笑って日向が拭き残している耳の後ろの汗を自分のタオルでそっと拭いた。

日向の顔が赤くなる。
自分に渡したタオルじゃなく、さつき自身が使っていたタオルだと思うとそれだけでもドキドキするのに、至近距離で女の子が汗を拭ってくれたのだ。
さらにドキドキするに決まってる。

「?」
「いや…なんでもない。」

桃井さつき…初めてあった時は、自分の魅力を充分理解している上でそれを使う術を知ってる女の子だなと思った。
そこまで分かっていても男なんて単純なもので、胸が大きくて可愛ければ目で追ってしまう。
多少計算高くてもそれを許せてしまうほどには、桃井さつきは可愛くて胸が大きいし。

だけど、試合であたった時は本気でムカついた。
日向が女にここまで腹を立てることなんて滅多にないのだけど、ドリブルの練習も努力して身につけた超速のバックステップも簡単に見破られた事、データバスケでオフェンスを封じられた事…。

可愛い顔してとんでもなく強かでえげつない女だ、試合であたった時はそう思った。
だけど今の桃井さつきは計算高くもなく、えげつないほど容赦のないマネージャーの顔でもない。

きっとこの顔が素の彼女の顔なんじゃないか、日向はそう思いながらさつきから目をそらした。

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