進撃の巨人
□あなたに捧げる恋の歌
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あさぢふの (リヴァペト)
夕食と入浴を終えたあとで少なくはない書類整理をしていたリヴァイは、ドアをノックする音に顔を上げた。
「兵長、ペトラです。」
ドアの外からかけられた声にリヴァイは
「入れ」
と入室の許可を出す。
ドアが開いて入ってきたのはポットとカップをのせたトレーを持ったペトラだった。
ペトラも入浴を済ませた後だったのか、色素の薄い髪はしっとりと水分を含んでいる。
軍服は着ていたが立体機動のためのベルトは身につけていなかった。
「書類整理をしているんじゃないかと思い、紅茶をお持ちしました。
お飲みになられますか?」
「なぜ、書類がある事が分かった?」
リヴァイはペトラの言葉を訝しく思い、そう聞いていた。
書類があることはペトラには言っていない。
ペトラに言えば、ペトラは手伝うというだろう。
リヴァイとペトラは付き合っていてそれはエルヴィンも知っているし、仕事となれば余計にペトラが深夜まで自分の執務室にいることは問題はない。
ただ、ペトラがいると自分が書類仕事よりもペトラとの時間を優先してしまうことを分かっていたから、リヴァイは黙っていたのだ。
「今日、モブリット副長がいらしてたので、書類を届けきたんじゃないかと思いました。
お手伝いは不要だから何も言わなかったのだろうとおもったのですが、それならせめてお茶を入れようかなと思ったんです。」
じっと自分を見つめるリヴァイにペトラははにかんだように笑いかける。
「そうか」
その笑顔はあまりにまぶしくてリヴァイは慌てて書類に視線を落とした。
「はい」
ペトラは返事をしてポットから紅茶をカップに注ぐ。
リヴァイはペトラをそっと盗み見た。
剣だこや傷はあっても白くて細い手でリヴァイ好みの紅茶を入れている。
ふいにリヴァイの胸にペトラを愛しいと思う気持ちが溢れてくる。
兵士としての凛々しい顔
自分の忠実な部下として職務を遂行する時の顔
他の兵士と話してるときの屈託のない笑顔
オルオやエレンに説教をする時の大人ぶった表情
そして自分だけ見せる女の顔
どのペトラも愛しくて愛しくてたまらない。
「どうぞ。」
自分のデスクに紅茶をおき、優しく微笑むペトラを立ち上がって抱きしめる。
「へいちょ…どうしたんですか?」
驚いたような顔をしているペトラの唇にリヴァイは優しくて激しいキスを贈った
あさぢふの 小野のしの原 忍ぶれど あまりてなどか 人の恋しき
お前への想いがあふれ出してもう抑え切れない
好きだ、好きだ、愛してる